不動産投資でダメ物件を掴まない物件の選び方【3つのステップ】

不動産投資 物件 選び方
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不動産投資はダメ物件を掴んでしまうと成功することができません。不動産選びが不動産投資において最も重要といっても過言ではありません。

  • 高利回りという点だけに目を向けて購入してしまい思わぬ空室や修繕によって赤字になってしまった
  • 所得税を節税したいのに新築区分マンションを購入してしまった

このような失敗は不動産投資の世界ではよくある話です。しかし、これらの失敗の多くは物件選びのポイントを押さえるだけでおおよそ回避できるのです。

「物件選びのポイントを知らないばかりに不動産投資に失敗してしまった…」

こうした失敗をする人を一人でも多く減らしたい。そのような想いから私たちは物件選びのポイントをまとめた記事を制作しました。

この記事では、物件の選び方について

  • STEP①:不動産業者からいい物件の候補を紹介してもらう
  • STEP②:集めた物件情報の中から、買うのは避けたい物件を除外する
  • STEP③:残った物件の中から、買う物件を見極める

以上の3つに分けてお伝えします。この記事でご紹介するチェックポイントは、私たちがこれまで5000棟以上の物件を視察して分かったデータに基づいています。

物件探し3ステップ

この記事を読み終えた時、あなたはきっと物件の「目利き力」が身についているはずです。保存版として、この記事に書かれていることをいつでも確認できるようにすることおすすめします。

チェックリスト一覧はこちら→ 不動産投資でダメ物件を掴まないための54のチェックリスト


1.STEP①:不動産業者からいい物件の候補を紹介してもらう

ステップ1候補探し

「そもそもどこで物件情報を入手するのか?」という点が重要です。ここでは、物件の良し悪しを判断する以前に物件の情報をどこで入手するのかについてお伝えします。

物件の情報はほとんどの場合、不動産業者からの紹介で得ることになります。「楽待」「健美家」などのポータルサイトから情報を得ることもできますが、ポータルサイトからいい物件を手に入れるのは初心者の方には困難なことが多いです。理由は以下の2つです。

ポータルサイトで見つけるのは困難

①本当にいい物件はポータルサイトにほとんど載らない

ポータルサイトに物件を掲載するのは不動産業者です。不動産業者がいい物件情報を得た場合、それをポータルサイトに掲載するでしょうか?答えはNOです。実際には不動産業者が懇意にしている顧客にそうした物件は流れてしまうことが多いです。ポータルサイトに掲載されるのは、顧客に紹介するには及ばないような物件がほとんどであるといえるのです。

②いい物件が掲載されてもすぐに売り止めになる

そうはいっても、たまにいい物件がサイトに掲載されることもなくはないです。しかし、たとえそうした物件が掲載されてもすぐに売り止めになってしまいます。ポータルサイトは誰でもいつでもアクセスできる非常にオープンな場所です。それゆえ、常に不動産業者やプロ大家がサイトを見ていて、いい物件がでたらすぐに買付をいれて物件を確保してしまうのです

ポータルサイトに載っている物件を選んで買うのではなく、あくまで目安として、利回りや駅距離などの相場観をつかむのがいいでしょう。また、物件を紹介してくれる不動産業者の候補先を探すのにも使えます。

物件紹介の流れ

具体的に物件情報を得る手順としては

  1. 不動産業者をWEB/書籍/口コミや紹介/自宅や勤務先の近くなどで探す
  2. 不動産業者の中から信頼できる業者を選ぶ
  3. 業者を訪問し、購入意思・物件ニーズを伝えて物件を紹介してもらう

このような手順となります。以下で、詳しく解説します。

1.1.不動産業者を4つの方法で探す

ほとんどの方は実際に不動産業者に赴いて物件を紹介してもらうことになります。おおまかに不動産業者の探し方をまとめると、次の4つの方法があります。

  1. WEBで探す
  2. 書籍で探す
  3. 口コミや紹介で探す
  4. 自宅や勤務先の近くで探す

どれか1つで探すというものではありません。4つの方法をすべて駆使して候補とする不動産業者をとにかくたくさんリストアップします。

探し方 内容 注意点
①  WEBで探す ポータルサイト、各社ウェブサイトをあたる 情報、倫理観への信頼性を長期にわたり確認
②  書籍で探す 書店の不動産投資コーナーにある書籍の著者が経営する会社をあたる 書籍を出版=安心ではない
③  口コミや紹介で探す WEB上の口コミや知人などの紹介から探す 紹介の質の良し悪し
④  自宅や勤務先の近くで探す 自宅、勤務先の近くを探す 保有する情報の過多、良し悪し

①WEBで探す

ウェブサイトを検索し、各不動産業者の情報を集めていく方法です。

最近では多くの不動産業者がウェブを使って情報発信をしています。「不動産投資 会社」「一棟アパート 会社」などのキーワードで検索するだけでも多くの会社がヒットします。また、メルマガやYoutubeなど様々な媒体を使って情報発信を行う会社も増えています。先ほどお伝えしたポータルサイトに物件を掲載している会社のホームページを訪れてみるのもいいでしょう。4つの手段のなかでも最も手軽な方法で、たいていの場合無料で情報提供を得ることができるのもいい点です。

ただし、ウェブである分信頼性についても注意が必要です。ある程度長期にわたってその会社の発信する情報を吟味しながら、その会社に共感、信頼できるかを検討しましょう

②書籍で探す

書店の投資に関する書籍コーナーに行けば、多くの不動産投資書籍が並んでいます。それらの書籍は不動産会社の経営者が書いていることが多くあります。書籍の著者情報を見ればたいていの場合、「○○株式会社 代表取締役」など経営する会社名が書かれています。そのうちのいくつかの本を手にとっていけば、不動産業者の情報だけでなく不動産投資のノウハウまでも手に入れられます。書籍でしか手に入れられないような情報が載っているのも魅力的ですね。

ただし、書籍を出している=信頼できる、というわけではないことに注意しましょう。「かぼちゃの馬車」事件で問題になった会社の代表も書籍を出版していました。

③口コミや紹介で探す

あなたのまわりに不動産投資を行っている同僚や知人がいれば、その紹介を受けて探すのも方法の1つです。また、「大家の会」や「オンラインサロン」などの不動産投資に関するコミュニティを探して参加するというのもいいでしょう。この場合でも、「あの人の紹介だから大丈夫」と早合点しないよう注意する必要があります。あなたの知人が不動産投資に関する知識を十分に持っているとは限りません。知人も知らないうちに儲からない物件を紹介してしまっている場合もあるのです。

また、大家の会などのコミュニティでは、入会金をとりながらその中では価値のない情報しかやり取りされていないなんてこともあります。

④自宅や勤務先の近くで探す

あなたの自宅や勤務先の近くにある不動産業者をあたるのも1つの方法です。グーグルマップで「不動産」などで検索をすれば周辺の不動産業者を探すことができます。不動産投資を始めるときや、管理運営を通して不動産業者には何回も足を運ぶことになります。そんな時に自宅や勤務先の近くに不動産業者があれば仕事帰りに足を運んだりすることができ便利です。

ただし、そもそもその会社が投資用物件を扱っていなかったり、保有する不動産の質が悪かったりするので、事前の下調べや良し悪しの吟味が必要です。

1.2.探した不動産業者の中から、信頼できる不動産業者を選ぶ

ここまで、不動産業者の探し方についてお伝えしました。しかし、不動産業者の中には質の低い、倫理観のない業者も存在します。不動産業者をあたる際は、信頼できる不動産業者を選ぶ必要があります。信頼できる不動産業者の条件は下記の通りです。これに当てはまる業者を探しましょう。

信頼できる業者の条件

  • 業歴が長い(10年以上)
  • お客様の声を公開している(実名、顔などもあればなお良し)
  • グレードの高いビル(入居審査が厳しい)に事業所を置いている
  • 多数の金融機関と取引がある
  • ネットで投資家からの怪しい噂が飛び交っていない

最低でもこれらを満たす不動産業者にあたりましょう。少しでも違和感があれば、その業者は避けるのが得策です。

1.3.不動産業者を訪問し物件を紹介してもらう

訪問する不動産業者の目星をつけて、実際に訪問します。ここで重要なのは、営業マンに対する姿勢です。

訪問するときのポイント

不動産業者の営業マンに、自分は物件を購入する意思があることを伝えなければ物件を紹介してもらうのは難しいでしょう。自分の熱量を伝えなければ、あなたよりも購入意思のある他の顧客に物件情報が流れ、売れ残りの物件しか紹介してもらえなくなってしまいます。

また、自分が購入を希望する目的を伝えることも重要です。あなたがどんな目的でどんな物件を欲しているのかを営業マンの頭の中に残すことで、営業マンも「この物件は、あのお客さんの目的に合っているな」と想起できるからです。これをいくつかの不動産業者で繰り返せば、あなたのもとには物件情報が十分に集まるでしょう。


2.STEP②:集めた物件情報の中から、買うのは避けたい物件を除外する

ステップ2避けたい物件を除外

ここまで来たら、いよいよ自分に最適な物件を選ぶ段階になります。しかし、物件の中には買うのは避けたい物件も存在します。これからお伝えするような物件については、検討物件から真っ先に外しましょう。そもそも儲けの出ない、最終的に売却という出口をとれない可能性があります。

避けたい物件3選

2.1.政令指定都市周辺のエリア以外は候補から外す

不動産が土地に固着するものであるため、不動産が存在するエリアの賃貸需要は非常に重要です。空室が多く、不動産投資の儲けの源泉である家賃が得られなければ、不動産投資は成り立たないからです。市町村の単位で見て長期的に人口が大幅に減少するエリアであれば、そのエリアでの物件取得は避けたほうがいいでしょう。東京・名古屋・大阪の三大都市圏や福岡など政令指定都市周辺のエリアであれば需要は見込めますが、その他のエリアは難しいでしょう。(ただし、郊外専門など不動産管理会社の集客力によってはその他のエリアでも検討可能です。)

また上記の需要の見込めるエリアであっても、物件の選定には注意が必要です。例えば、郊外にある大学の学生をターゲットにしているアパートは、その大学が移転してしまったら入居者を獲得できず大ダメージを受けてしまいます。昨今の大学の都心回帰の傾向から見ても、このようなできごとは現実味が増しています。

2.2.確認済証がない等違法建築物は候補から外す

法令の基準に違反している、違法建築物も避けなくてはなりません。こうした物件は銀行の融資がつきづらく、ついても高金利になります。そのため、投資効率が悪化してしまいますし、次の買い手が見つかりづらく出口戦略も成り立ちません。対策としては、「確認済証」が出ているかどうかを確認することです。これは物件の建築前にその建築計画が建築基準法に適合していることを示すものです。ほとんどの物件ではこれを取得しているので、これがない場合は手を出さないほうがいいでしょう。

なお、物件の建築後に法への適合の有無を確認する「検査済証」については取得していない物件も多いです。こちらは(あるに越したことはないですが)なくても問題はありません。

2.3.殺人事件があった等瑕疵のある物件は候補から外す

その物件で過去に殺人事件・火事・自殺・孤独死などがあった場合、新たに入居する人や物件を最終的に売る際に告知する義務があります。そのため、入居付けや物件の売却の難易度が上がってしまいます。特に、殺人事件の場合は物件の価値が半減してしまうこともあるため避けたほうがいいでしょう

一方、自殺や孤独死については家賃を多少下げれば入居は決まるので、一概にすべて避けなければならないわけではありません。購入前に重要事項説明書をよく確認することがポイントです。


3.STEP③:残った物件の中から、買う物件を見極める

ステップ3買う物件を選ぶ

買うことを避けたい物件を外せば、いよいよ自分の買う物件を選ぶ段階になります。実際に物件を選ぶ際は、まず初めに自身の投資目的を確認します。その後、その目的に沿って物件の様々なチェックポイントを確認していきます。

買う物件を選ぶ観点

どんな目的であっても、副収入を得ることは共通して重要になってきます。そのため下記の観点で物件をチェックすることは必須といえるでしょう。

  • 投資的観点 …利回り、築年数、土地値等、物件自体が投資の対象として適切かどうかを判断します。
  • 賃貸需要の観点 …駅徒歩、賃料など、その物件で空室がしっかり埋まるかどうかを判断します。
  • 建築的観点 …内装リフォーム率や大規模修繕履歴など、物件購入後に修繕で支出が発生するリスクを判断します。
  • 現地確認時 …実際に物件を見に行く際、入居者の生活の様子や物件エリアの雰囲気に問題がないか判断します。

さらに、目的に応じて下記のような条件も考慮します。

  • 所得税・住民税の節税目的 … 減価償却費を大きく計上できる物件を選ぶ。
  • 相続税の節税目的 … 評価額を大きく圧縮できる物件を選ぶ。

以下、具体的に説明をしていきます。

3.1.物件探しの前に、投資の目的を確認しよう

実際に物件を探す前に、あなたが不動産投資を行う目的を明確にしなくてはなりません。なぜなら、その目的によって最良の物件の定義が変わってくるからです。これを怠ると、あなたの中での判断軸は鈍ってしまいます。節税が目的のはずなのに空室リスクの低さにとらわれて新築物件を選んでしまう、相続目的なのに利回りの高さにとらわれ地方の物件を選んでしまうなどです。

不動産投資の目的は多くの場合下記の通りになります。

  • 副収入目的(全目的共通)
  • 所得税・住民税の節税
  • 相続税の節税
目的 内容
①  副収入(全目的にも共通) 家賃収入を給与収入以外の収入として得る目的。また、家賃収入だけで生活する目的。

②  所得税・住民税の節税

減価償却費を多く計上し不動産所得で赤字を作り、本業の所得と損益通算をすることで所得税等の節税をはかる目的。有名企業のサラリーマン、医師、経営者などの高所得者層に多い。
③  相続税の節税 既に多くの資産を作り上げており、その資産を自分の子や孫に承継する際にかかる相続税を抑える目的。平成27年の相続税制の改正により基礎控除が減額、税率も上昇したことでニーズが増している目的でもある。

目的は1つの場合もあれば、①と②など、複数の目的を同時に狙うこともあります。自分がどの目的をもっているのかを確認した上で、物件探しを始めましょう。

3.2.副収入目的(全目的にも共通)でここはチェックする

どんな投資目的であっても、副収入を得るという目的は共通して重要になってきます。そこで共通して確認しておきたいポイントがあります。この項目が最も数としては多いですが、それだけ重要ということになります。

副収入目的のチェックポイント

具体的には、下記のポイントをチェックします。

・投資的観点 …利回り、築年数、土地値等、物件自体が投資の対象として適切かどうかを判断します。

  1. 利回りが相場と照らし合わせて低すぎないか、高すぎないか
  2. 空室率が50%を下回っているか(入居率が50%を上回っているか)
  3. 長期空室(3か月以上)があるか
  4. 築年月が1981年(昭和56年)6月以降か
  5. 物件所在エリアの現在人口は原則100万人以上とする
  6. 土地値が物件価格の7割以上か
  7. 取引態様が「売主」か
  8. 契約不適合責任が説明なしに免責されていないか
  9. 接道要件を満たしているか(前面道路の状況など)
  10. 土地の権利形態が「借地権」ではないか
  11. アンテナ収入があればラッキー
  12. 敷地内電柱はデメリットの方が大きいが総合的に判断
  13. 自治会・町内会費の支払いがあるか
  14. プロパンガスが導入されているか
  15. 容積率に空きがあるか

・賃貸需要の観点 …駅徒歩、賃料など、その物件で空室がしっかり埋まるかどうかを判断します。

  1. 駅までの距離は影響が少ない
  2. 割安賃料で入居していれば賃料アップのチャンスがある
  3. 駐車場がついているか
  4. バス・トイレが別になっているか
  5. 間取り・㎡数が地域の需要に合致しているか
  6. 入居者に人気の設備が導入されているか
  7. 物件周辺の生活関連施設が充実しているか(コンビニ、市役所など)
  8. 物件周辺に嫌悪施設が存在しないか
  9. 周辺に農地が多ければ注意
  10. 最寄り駅の電車の本数、バスの本数(1時間に一本のレベルなら注意)

      ・建築的観点 …内装リフォーム率や大規模修繕履歴など、物件購入後に修繕で支出が発生するリスクを判断します。

      1. 内装のリフォーム率が低くないか
      2. 外壁塗装や屋上防水の工事が実施済か
      3. エレベーターが導入されている場合、最大1000万円の支出を見込む
      4. 自動火災報知機が設置されている場合、100万円以上の費用を見込む
      5. 貯水槽・給水ポンプがある場合は100万単位の支出を見込む
      6. 浄化槽が設置されていれば、点検の義務有
      7. オートロックが設置されている場合、最大400万円の費用負担が発生する可能性がある
      8. 断熱ブロックが屋上に使用されている場合、1000万円程度修繕にかかる可能性もある
      9. 配管は隠ぺい配管より露出配管がよい
      10. 電気温水器は無い方がよい
      11. 特殊エアコンは無い方がよい
      12. LED電灯に交換されている方がよい

      ・現地確認時 …実際に物件を見に行く際、入居者の生活の様子や物件エリアの雰囲気に問題がないか判断します。

      1. 図面と現況の差異がある場合注意
      2. 物件のあるエリアの雰囲気を探る
      3. 物件入居者の生活の様子
      4. 駐車場に止まっている車の雰囲気
      5. 共用部がごみなどで乱雑な場合注意
      6. 洗濯機置き場が部屋の外にあるか、中にあるか
      7. 瓦屋根が採用されている場合注意

      投資的観点

      まずは投資物件としてのパフォーマンスを示す指標、属性について確認します。

      ①利回りが相場と照らし合わせて低すぎないか、高すぎないか

      利回りは物件の収益性を示すもっとも基本的な指標です。表面利回りが相場やその物件の属性からして低すぎないか、高すぎないかを確認します。低すぎる場合、物件を購入しても赤字になる可能性があります。また、高すぎる場合はその物件が過去に殺人事件があった、割高賃料で入居しているなどのリスクがある可能性があります。ほとんどの場合、物件資料の目立つ部分に記載されています。

      利回り

      物件の属性によって適正な利回りは変化しますが、相場は下の図の通りです。

      ・不動産投資ポータルサイト「健美家」による20207月の物件概況

      健美家

      ・日本不動産研究所による「第41回不動産投資家調査(20204月時点)」の結果

      不動産研究所調査

      詳しくはこちらの記事をご覧ください。 

      ②空室率が50%を下回っているか(入居率が50%を上回っているか)

      中古一棟アパートを購入する場合、現在どのくらい空室が存在するかが重要になります。実際に購入する場合はシミュレーションを行って現在の空室率で黒字になるかどうかを判断しますが、空室率が50%を超えてしまうとほとんどの場合赤字です。最低ラインとして空室率が50%を下回っているかどうかを確認します。

      物件資料の中のレントロールをみることでこちらは確認できます。

      レントロール

      図のレントロールであれば12室中1室のみ空室ですので、空室率は8%(入居率92%)になります。

      ③長期空室(3か月以上)があるか

      物件に空室が存在する場合、いつから空室になっているかを確認します。長期間にわたって空室がある場合、その後も空室が埋まらない危険があります。基本的に長期空室がある場合は避けたほうがいいでしょう。おおよそ3か月空室になっていれば、長期空室といえます。ただし、賃料設定、リフォームの有無、募集活動の内容によっては簡単にそうした空室を埋められる可能性もあります。

      物件資料中レントロールに記載されることがあります。記載がない場合は物件の紹介を受けた担当者に確認しましょう。

      ④築年月が1981年(昭和56年)6月以降か

      築年月日が1981年(昭和56年)5月以前の場合、「旧耐震基準」の物件になります。それ以降に建てられた物件に比べて耐震性が低くなってしまうので、避けたほうがいいでしょう。こちらも物件資料に記載があるので、そちらで確認ができます。

       築年数

       

      ⑤物件所在エリアの現在人口は原則100万人以上とする

      賃貸需要は物件があるエリアの人口によって左右されます。人口減少社会の日本において、人口動態を把握せず物件を購入してしまうとまったく入居付けが進まず、流動性が低いため物件が売れないということもあり得ます。具体的には、原則人口が100万人以上の都市で物件を買うとよいでしょう。

      しかし、人口が50万人程度の都市であっても決して買ってはいけないわけではありません。物件のボリューム(価格)次第では購入を検討できます。重要なのは、都市の規模と物件ボリュームのバランスになります。例えば、群馬県高崎市(人口約25万人)で10億円の物件を売るのは難しいですが、5,000万円程度の物件であれば売却は難しくありません。

      人口については、物件所在地で「○○市 人口」と検索をすることで簡単に調べることができます。

      ⑥土地値が物件価格の7割以上か

      土地値とは、物件が建っている土地の価格を指します。その物件が現時点でどれくらいの売却価格になるのか(実勢価格)を、直近の近隣の取引事例から推測するものです。その土地値が物件価格の7割以上であるならば、ぜひ購入したいところです。物件の価格は年を経ることに下落しますが、その資産価値は土地値以下にはなりません。つまり、物件の価値が下がりにくい物件なのです。また、このような物件は金融機関からの評価も高く、融資が受けやすくなります。

      実勢価格は下記のサイトから調べることができます。ただし、土地の価値は個別性が強いのであくまで参考程度にとらえるのがよいでしょう。

      ・国土交通省 土地総合情報システム https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet

      ⑦取引態様が「売主」か

      取引態様はその物件がどのように販売されているのかを示すもので、「仲介(媒介)」か「売主」かで示されます。

      取引形態「売主」

      売主の場合は、不動産業者が自社で保有する物件を直接買主に販売します。

      取引形態「媒介」

      仲介の場合は、不動産業者は買主に売主の保有する物件を紹介します。仲介の場合、不動産業者に仲介手数料を支払わなければなりません。この手数料は物件価格の約3%5000万円の物件を購入した場合は約150万円もの余分な費用が発生してしまうのです。取引態様は「売主」がいいでしょう

      物件資料に取引態様がどのようなものかは必ず表示されています。

      取引態様

      ⑧契約不適合責任が説明なしに免責されていないか

      契約不適合責任とは、物件に雨漏りやシロアリなどの不備があった場合に不動産の売主に修理や損害賠償などを求めることができる制度です。物件の契約内容によっては、このような責任が免責される場合があります。免責される場合、不動産に不備があっても原則として責任追及することができません。不動産投資上級者であれば免責の代わりに価格を下げるなどの交渉も行われますが、基本的には免責しない方がいいです。

      こちらも物件概要書に記載があります。たいていの場合、物件の引き渡しから2年間と設定されています。

      契約不適合責任

      ⑨接道要件を満たしているか(前面道路の状況など)

      建築基準法により、アパート含め建築物は幅員4m以上の道路に2m以上接道しなくてはなりません。この接道要件を満たさない場合、アパートの再建築ができず資産価値が下落するため注意が必要です。

      こちらも物件概要書に記載があるので、確認をしておきましょう。

      接道条件

      ⑩土地の権利形態が「借地権」ではないか

      アパートの売主がその土地についてどういう権利形態をとっているかも重要です。注意が必要なのが、「借地権」の場合です。借地権は、アパートの所有者が土地の地主から土地を借りてその上にアパートを建てている形態のものです。

      この借地権物件は融資が出にくく、流動性が低いというデメリットがあります。融資については、「地代の滞納があった場合には金融機関に通知する」という内容の承諾書を地主の判つきで提出しなくては融資がおりません。金融機関としては滞納に気づかずいきなり借地契約が解除されてしまったら担保を失ってしまうため、このような承諾書を求められます。そのようなデメリットがあるのが借地権物件です。

      なお、借地権物件はそのようなデメリットの分利回りが2~3%ほど高くなります。上記のようなデメリットを解消できれば、購入検討をするのもありです。

      権利形態についても、物件概要書を確認しましょう。

      所有権

      ⑪アンテナ収入があればラッキー

      一部の物件には携帯電話通信用のアンテナが設置されている場合があります。月数万円の収入アップにつながる一方デメリットはないのであればラッキーです。

      設置の有無は物件概要書の備考欄に記載されることが多いです。

      アンテナ収入

      ⑫敷地内電柱はデメリットの方が大きいが総合的に判断

      アンテナ収入に類似するものとして、敷地内電柱があります。敷地内に送電用の電柱が設置されており、電力会社から敷地使用料が支払われます。ただし敷地使用料は年間1000円強とわずかです。また、景観の悪化や送電線による建物の高度制限などがあるため、デメリットの方が大きいです。とはいえそのデメリットもそれほど大きいものではないので、他の観点と合わせて総合的に判断することとなります。

      アンテナ収入同様、こちらも物件概要書に記載があります。

      敷地内電柱

      ⑬自治会・町内会費の支払いがあるか

      物件によっては、その地域の自治会費や町内会費が徴収されることがあります。おおよそ月300円程度が部屋数分かかってきます。オーナー負担の場合があれば、入居者負担の場合もあります。内容を確認し、オーナー負担である場合は収支シミュレーションの際に考慮にいれます。

      オーナー負担の有無については、物件概要書に記載されます。また、会費などはレントロールに記載されることが多いです。

      町内会費

      町内会費

      ⑭プロパンガスが導入されているか

      物件にプロパンガスが導入されている場合、ガス会社の特典によってモニターフォンや無料インターネット設備を導入してくれることがあります。こうした設備があると入居付けにとって有利に働きます。(ただし、ガス会社によっては入居者のガス料金負担が高くなる場合もあるので注意が必要です)

      プロパンガスについても、概要書の備考欄に記載があります。

      ⑮容積率に空きがあるか

      容積率に空きがある場合、物件の利用価値がアップするためプラス要素として評価します。それぞれの建物は、敷地の広さに対して建てられる建物の広さ(延べ床面積)が決まっており、その制限の基準が容積率になります。

      容積率= 延べ床面積/敷地面積

      例えば180平米の敷地で容積率200%の制限がある敷地においては、延床面積は360平米までとなります。その敷地に現在ある建物の延べ床面積が270平米の場合、現在の容積率は270平米/180平米で150%となります。このような物件は再建築する際により大きな物件を建てることができ、収益性のアップが期待できます。

      容積率がどの程度に制限されているかは物件概要書に記載があります。現在の物件の容積率は概要書に記載されないこともあるので、土地の地積と建物の延べ床面積から自分で計算します。

      容積率

      こちらの例では、指定の容積率は200%です。一方、現在の容積率は敷地面積(地積)が305.37平米、延べ床面積が191.32平米ですので容積率は約62%になります。

      賃貸需要の観点

      不動産投資において基本となる収入は「家賃」です。家賃が入るかどうか、それは賃貸需要があるかどうかによります。ここからは、物件の賃貸需要を判断する基準をお伝えします。

      ①駅までの距離は影響が少ない

      物件の賃貸需要に大きく影響を与えるのが駅からの距離です。駅から近いほど楽に入居付けをすることができます。しかし、駅から遠ければ絶対入居者がつかないととらえるのは間違いといえます。

      下記のデータによれば、駅距離による空室率の変化はほとんどありません

      項目 総数 最寄りの交通機関までの距離
      200m未満 200~500m 500~1,000m 1,000~2,000m  2,000m以上
      有人「賃貸住宅」数 18,518,900 1,456,000 3,454,300 4,782,300 4,430,600 4,395,800
      空き家「賃貸住宅」数 4,291,800 334,700 756,900 1,086,500 1,045,000 1,068,700
      「賃貸住宅」数 22,810,700 1,790,700 4,211,200 5,868,800 5,475,600 5,464,500
      空き家率 18.8% 18.7% 18.0% 18.5% 19.1% 19.6%

      (引用元:「将来、空室率がどのくらい上昇するか予測してみた!③(築年数、構造、最寄駅からの距離が空室率に与える影響)」

      たとえ駅から遠くても、バス便の存在・部屋の状況・入居付けの営業方法などによっては入居者をつけることは難しいことではありません。実際、当社は管理物件の46%が駅徒歩20分以上にありますが、入居率は98%を誇っています。

      また、駅から遠いほど利回りアップも見込めます。重要なのは、駅から遠くても入居付けを実現してくれるパートナーを探すことです。とはいえ駅から遠いと心配、という方は駅徒歩20分以内かどうかを目安にするといいでしょう。徒歩20分が徒歩圏内か、バス便かの境目となります。

      最寄り駅のアクセスについても、物件概要書に記載があります。

      交通

      ②割安賃料で入居していれば賃料アップのチャンスがある

      検討中の物件の賃料が安い場合、物件購入後募集に一工夫加えることで賃料を上げて入居付けをできる可能性があります。

      物件の現在の賃料はレントロールで確認します。

      レントロール

      賃料が相場より割安かどうかは、SUUMOなどの賃貸住宅情報サイトで同じような条件の物件の賃料を確認する方法で探ります。割安である場合に多いのが、入居募集の間口が狭いことや部屋のグレードが低すぎることです。これらは管理会社の力量によるところが多いので、物件購入後に管理を行ってくれる管理会社が

      • 幅広く募集を行っているか(自社仲介店舗でしか募集してないパターンはアウト)
      • 部屋のリフォームを行える建築ノウハウを持っているか(一級建築士が社内にいる等)

      このような点を満たしているかを確認します。

      ③駐車場がついているか

      駅から距離のある物件やファミリー向けの物件の場合、駐車場がついているかどうかが重要になってきます。駅から徒歩20分以上の場合は駐車場がつくかどうかを検討したほうがいいでしょう。もし物件に物件の敷地内に駐車場が用意されていなければ、近隣に駐車場が借りられるがどうかを確認します。もしこのような物件敷地外にも駐車場がなければ、入居付けが難航する可能性があります

      駐車場の有無についても、レントロールで確認ができます。

      駐車場

      ④バス・トイレが別になっているか

      古い物件の場合、お風呂とトイレが一緒(ユニットバス)になっている可能性があります。間取りや駅距離によっては、バス・トイレ別かどうかが入居付けに影響する場合もあります。ユニットバスをバス・トイレ別に変更する工事は約50万円ほどかかりますので、ユニットバスの物件を購入する場合はその費用がかかる可能性があることを見込む必要があります。

      物件資料のうち、間取り図をみることでバス・トイレが別かどうかを確認することができます。

      BT確認

      ↑図の間取りでは、ユニットバスになっています。(ちなみにこの物件の場合は、駅距離が6分であることや1Kの単身向け間取りであることから、ユニットバスのままでも入居付けができています。)

      ⑤間取り・㎡数が地域の需要に合致しているか

      その物件に採用されている間取り(1K、1LDKなど)や㎡数がその地域のニーズに合致しているかどうかを確認します。

      典型的な例が、オーナーズルームがある事例です。オーナーズルームは、物件を当初建てた大家さんが住むように作られた部屋で、同じ物件の他の部屋と比べて間取りが広い、設備がよいという特徴があります。しかし、オーナーズルームは多くの場合オーバースペックで家賃が高くなり、入居がつきづらいという特徴があります。

      オーナーズルームを普通の居室に変換する工事も可能ですが、1㎡あたり10~13万円という大きな費用が掛かってしまうので、検討物件にオーナーズルームがあった場合は注意が必要です。

      レントロールにおいて他の部屋に比べて間取りが広い(4LDKなど)、㎡数が大きい部屋があった場合、オーナーズルームかどうか確認しましょう。

      ⑥入居者に人気の設備が導入されているか

      入居者にとって人気の設備が採用されていれば、当然入居付けはしやすくなります。最近人気の設備は下記の通りです。

      • ウォークインクローゼット
      • カウンターキッチン
      • 無料インターネット

      これらの設備がある場合は、入居付けに関してプラス評価をすることができます。ウォークインクローゼットやカウンターキッチンについては間取り図を確認します。

      間取り

      ↑図の間取りでは、ウォークインクローゼット(WICと記載)、カウンターキッチン(居室に対してキッチンが向いている)が導入されていることが分かります。

      インターネットの無料設備があるかどうかは担当者へのヒアリングと物件概要書への記載を確認することで判別します。

       インターネット

      無料インターネットの場合ネット利用料が家主負担の場合があります。その場合は収支のシミュレーションに利用料を組み込む必要があるので注意が必要です。

      ⑦物件周辺の生活関連施設が充実しているか(コンビニ、市役所など)

      物件周辺に生活関連施設があるかどうかも重要になります。

      • コンビニ、スーパーマーケット
      • 市役所などの公共施設

      これらの施設が周辺に全くないとなると、賃貸需要が見込めない可能性があります。とはいえ駐車場付きの物件などであれば近隣になくても大丈夫ですので、入居付けができるかどうかという観点で考える必要があります。

      周辺の生活関連施設については、物件の住所をGoogle マップなどで検索することで探すことができます。

      ⑧物件周辺に嫌悪施設が存在しないか(工場、墓地など)

      生活関連施設とは逆に、嫌悪施設がある場合は入居付けにおいてマイナスが出る可能性がありますので注意が必要です。嫌悪施設はその存在が周囲の人に煙たがられる施設で、下記のようなものがあります。

      現象 施設
      騒音や振動の発生 高速道路等の主要道路、飛行場、鉄道、地下軌道、航空基地、大型車両出入りの物流施設 等
      煤煙や臭気(悪臭)の発生 工場、下水道処理場、ごみ焼却場、養豚・養鶏場、火葬場 等
      危険を感じさせる ガスタンク、ガソリンスタンド、高圧線鉄塔、危険物取扱工場、危険物貯蔵施設、暴力団組事務所 等
      心理的に忌避される 墓地、刑務所、風俗店、葬儀場 等

      (出典:公益財団法人不動産流通推進センター https://www.retpc.jp/archives/17268/

      必ずではありませんが、これらの施設があることで家賃を下げなければ入居付けができないということもあります。特に、暴力団事務所については避けられることが多いです。嫌悪施設についても、多くはGoogleマップで探すことができます。また、物件を紹介してくれた担当者も教えてくれる場合があります。

      ⑨周辺に農地が多ければ注意

      2022年、生産緑地といわれるそれまで農地としてしか使用できなかった土地の多くが農地以外にも使用できるようになります。これは生産緑地の2022年問題と言われています。2022年以降、制限の解除により多くの土地が農地から宅地に転用されることが予想されています。物件周辺に生産緑地指定のされている農地が多くある場合、2022年以降宅地への転用により競合となるアパートやマンションが増加する可能性があるので注意が必要です。

      物件周辺の農地が生産緑地であるかどうかは、

      • 現地(またはGoogleマップのストリートビュー)で生産緑地の看板が立っているかどうか確認
      • 市役所(またはそのHP)の都市計画課で確認

      これらの方法で確認することができます。

      ⑨最寄り駅の電車の本数、バスの本数(1時間に一本のレベルなら注意)

      最寄り駅の電車の本数やバスの本数が多ければ多いほど、生活利便性が高く人気のエリアになります。1時間に1本しか電車が来ない、といった地域であれば、賃貸需要はあまり見込めません。あまりに電車やバスの本数が少ない場合は注意が必要です。

      物件資料に記載の最寄り駅やバス停が分かったら、その駅名、バス停名をネットで検索し、本数を確認しましょう。

      建築的観点

      賃貸需要は家賃収入に影響をします。一方で、物件を購入してからのコストに影響するのが物件の建築的観点から見た状況です。なお、こちらの項目のうちの多くは物件概要書に記載がないことがあります。その場合は、物件を紹介してくれた担当者に設備の有無や交換時期を確認するといいでしょう。もし交換時期がせまっているのであれば、その交換費用を物件購入前に見込んだうえで収支のシミュレーションを行う必要があります。

      一般的な建築的観点
      ①内装のリフォーム率が低くないか

      物件のうち、内装のリフォームを行っている部屋の割合が低ければ物件購入後にリフォーム費用がかさんでしまいます。物件の部屋数のうち何部屋でリフォームを行っているかを確認します。単なる原状回復工事だけではなく、ユニットバスのバス・トイレ別への工事など、費用のかかるリフォームを完了している部屋が多ければ多いほど修繕のリスクは減少します。

      具体的に何%くらいリフォームをしていればいいかという基準はありませんが、行っていない部屋数分のリフォーム費用を見込んでおく必要があります。費用としては1㎡あたり1.3~1.6万円を見込みます

      内装のリフォーム率については物件概要書に何部屋リフォームを実施済なのか、実施予定なのかが記載されています。リフォームの内容については、担当者に確認します。

      内装リフォーム

      ②外壁塗装や屋上防水の工事が実施済か

      内装のリフォーム同様、外壁塗装や屋上防水の工事が行われているかどうかも重要です。何百万とかかる工事になりますので、これらの工事がすでに実施済みであれば修繕費用を抑えることができお得になります

      こちらも同じく物件概要書で確認できます。

      外装工事

      ③エレベーターが導入されている場合、最大1000万円の支出を見込む

      エレベーターが導入されている場合、交換などの設備維持で400~1,000万円、その他メンテナンス費用も掛かってくるため、その費用を見込む必要があります。

      こちらは物件概要書には記載がない場合もあるため、担当者にエレベーターの有無と交換履歴を確認します。

      ④自動火災報知機が設置されている場合、100万円以上の費用を見込む

      自動火災報知機は火災による煙や熱を感知しベルを鳴らすことで火災を知らせる設備です。アパートでは500平米以上の場合に必要となります。15年を目安に交換が必要で、交換工事費用は100万円以上です。

      自動火災報知機

      ⑤貯水槽・給水ポンプがある場合は100万単位の支出を見込む

      貯水槽は水をためる設備です。給水ポンプは水を各住戸におくる設備です。貯水槽は1年に1回の清掃・点検が義務付けられておりこの点検ができておらず工事が必要となると100万単位の支出が発生します。

      高置水槽

      特に注意が必要なのが図の高置水槽です。こちらの水槽は特にメンテナンス費用がかかり、改修工事には500万円程度かかってしまいます。

      ⑥浄化槽が設置されていれば、点検の義務有

      浄化槽は微生物の働きにより汚水を浄化する装置です。年1回の清掃、年4回程度の保守点検、年1回の法定点検が義務付けられます。

      ⑦オートロックが設置されている場合、最大400万円の費用負担が発生する可能性がある

      オートロック設備が導入されている場合、15年を目安に更新をする必要があります。交換費用は200万円以上ですが、使用されている部品が生産中止になっていると、最大400万円程度必要になってきます。

      ⑧断熱ブロックが屋上に使用されている場合、1000万円程度修繕にかかる可能性もある

      断熱ブロック

      断熱ブロックは断熱材と特殊モルタルが合わさって45センチ程度のブロックです。建物の断熱性能が上がる、防水層と呼ばれる層の寿命が長くなるというメリットがありますが、それでも防水層が劣化した場合、莫大な修繕費用が掛かります。通常の工事に加え、断熱ブロックをどかした上で工事を行うため費用が増えてしまいます。過去の当社の事例では1,100万円程度かかったこともあります。

      ⑨配管は隠ぺい配管より露出配管がよい

      給水管・給湯管・排水管といった配管がどのように配置されているかも重要です。配管の交換目安は20年です。コンクリートの中に配管が隠れている隠ぺい配管では漏水時の漏水箇所特定が困難になります。また、修繕費用も交換になるため、隠ぺい配管より露出配管の方がメンテナンス性に優れています

      ⑩電気温水器は無い方がよい

      電気温水器は割安な夜間電力を利用して翌日必要なお湯を貯める設備です。しかし、ガス給湯に比べて交換に手間がかかります。また、ガス給湯器は無償交換もあり得るのに対し、電気温水器は35万円以上の交換費用がかかるため賃貸住宅には向かない設備です。

      ⑪特殊エアコンは無い方がよい

      天井カセット型エアコン マルチエアコン

      ↑天井カセット型エアコン、マルチエアコン

      天井に埋め込んで設置される天井カセット型エアコンや1台の室外機で複数の室内エアコンを運転するマルチエアコンはメンテナンスできる業者が限定されるため、費用が高額となります

      ⑫LED電灯に交換されている方がよい

      水銀灯や蛍光灯といった従来の照明設備は、続々と生産が終了しLED電灯に切り替わっていっています。現在アパートに旧来の電灯が使用されていた場合、物件購入後にこうした電灯の交換費用が掛かってきます。その場合は修繕費用を見込んでおく必要があります。

      (参考)その他専門的な観点

      ここまでは、建築的観点の中でも代表的なものをお伝えしました。この他にも、当社では下記の項目で一級建築士が物件の状況を確認しています。物件を購入されている方がご自身で確認されるのは難しいと思うので、気になる項目があれば物件の担当者に確認してみるのがいいでしょう。

      リブレス

      現地確認事項

      ここまで説明してきた観点は物件資料を見ながら、そして担当者に確認しながら等で実際に現地に行かなくても確認できる事項でした。ここまでのチェックポイントを確認し問題がなければ実際に現地を見に行きます。

      現地確認では、下記の事項を確認しましょう。

      ①図面と現況の差異がある場合注意

      不動産業者の担当者から物件の間取り図などの図面をもらうことがあります。そのような図面がある場合、実際に現地に行った際に図面と現況に差異があるかどうかを確認しましょう。

      多くの場合、不動産関係の資料には「資料と現況が異なる場合は現況を優先する」という記載がされます。不動産関係の図面は実際の構造や間取りと異なることもよくあります。そうしたことによるトラブルを防ぐためにこうした記載がなされます。たとえ図面と現況が違ったとしてもアパート購入者は不動産業者に責任追及を行うのは困難です。現地確認の際に可能な範囲で図面などとの違いがないかを確認するとよいでしょう

      ②物件のあるエリアの雰囲気を探る

      実際に物件の最寄りの駅に着いたら、駅から物件まで向かいます。その際、物件から離れていても歩いて物件まで向かうことをお勧めします。駅からの距離感がどんなものなのか、ファミレスやコンビニがどれくらいあるのかなどを実際に見て知ることでそのエリアが住みやすいのか、住みにくいのかといったことが分かります。

      また、実際に歩くことで高低差も感じることができます。同じ駅徒歩15分でも高低差があるかないかで暮らしやすさは大きく変わりますし、賃料にも影響します

      ③物件入居者の生活の様子

      実際にその物件に住んでいる入居者の様子を確認します。わかりやすいのは、洗濯物です。入居者がどんな生活をしているのかが洗濯物によく表れるのです。

      ④駐車場に止まっている車の雰囲気

      その他、入居者の属性をはかるものとして、駐車場に止まっている車があります。車を見ることでも、どんな入居者が住んでいるかが分かります。

      ⑤共用部がごみなどで乱雑な場合注意

      廊下などの共用部にごみが散らかっていると、物件の管理がうまくいっていないことが推測できます。その後のトラブルのもとにもなりますので、物件の管理会社に確認する必要があります。

      ⑥洗濯機置き場が部屋の外にあるか、中にあるか

      洗濯機が廊下などの共用部に置かれている場合があります。このような場合、特に女性にとって物件の人気が下がってしまいます。もし洗濯機置き場が部屋の外にあれば、中に置き場を移すことを考えなければなりません。その場合、工事費用が1室13万円程かかってきます

      ⑦瓦屋根が採用されている場合注意

      物件の屋根に瓦屋根が採用されている場合、見栄えの悪さからリフォームが必要になる場合があります。その場合の工事費用も大きくなるので、注意が必要です。

      3.3.所得税・住民税の節税目的ではここをチェックする 

      ここまで、どのような目的で不動産投資を始める場合でも共通して重要な物件のチェックポイントをお伝えしてきました。

      それに加えて、所得税等の節税や相続税の節税目的の場合、さらに必要なチェックポイントがいくつかあります。ここでは、所得税・住民税の節税目的の場合に必要な観点をお伝えします。

      こちらの目的の場合、「減価償却費」をいかに多く計上できるかがカギとなります。減価償却費は実際の支出を伴わない経費で、この経費を計上することで所得税・住民税の節税を果たせます。

      節税目的

      下記のポイントをチェックします。

      1. 物件の構造が木造か
      2. 木造の場合、築年数が22年を超えているか
      3. RC造の物件の場合、設備を建物本体と分けて減価償却を行う

      所得税・住民税の節税について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

      ①物件の構造が木造か

      減価償却費は物件の耐用年数が少ないほど1年で多く計上できます。

      法定耐用年数

      図は新築建物の法定耐用年数です。木造は耐用年数が短いため、減価償却費を多く計上できます。所得税等の節税目的の場合は、真っ先に木造物件を選びましょう。

      ②木造の場合、築年数が22年を超えているか

      減価償却期間

      木造物件でも新築の場合、節税効果は少なくなってしまいます。一方、その物件の築年数が法定耐用年数を超えている場合、減価償却の期間は法定耐用年数の20%になります。木造の法定耐用年数は22年のため、築年数が22年を超えていれば減価償却期間は 22年×20% で4年となります。木造の、かつ耐用年数切れの物件を購入することで、4年という短い期間で減価償却費を計上できるのです所得税等の節税の場合、木造・築22年以上の物件を選びましょう

      ③RC造の物件の場合、設備を建物本体と分けて減価償却を行う

      ここまで節税効果が大きいのは木造・耐用年数切れの物件とお伝えしてきました。しかし、もう1つ所得税等の節税効果が狙える方法があります。それは、設備と建物本体(躯体部分)を分けて減価償却を行うことです。

      減価償却の際は建物本体とエレベーターや給湯器などの設備を分けて償却をとることが可能です。この場合、設備の耐用年数は15年です。本体同様、耐用年数切れの設備の減価償却期間は 法定耐用年数×20%となるので、築20年の物件を取得すると3年で設備の減価償却を行うことができます

      特に、耐用年数の長いRC造の物件であればこの方法が効果的です。この場合でも、売買契約書に設備の価格を建物本体と分けて明記する必要があります。設備の価格は建物総額の1~2割(エレベーターがあれば3割も可)くらいが妥当な金額になります。

      3.4.相続税の節税目的の場合はここをチェックする

      相続税は、被相続人(亡くなった方)の資産の評価額によって決定されますが、資産をどのような形態で保有しているかによってその評価額は変わります。例えば、現金として資産を保有していた場合は現金の価格がそのまま評価額になりますが、不動産で資産を保有している場合は、その評価額が時価の5割ほどになりますこの「時価と評価額の差」を用いることで、不動産投資を通して相続税を節税することができます

      それゆえ、相続税目的の場合は「評価額をできるだけ多く圧縮できる物件を選ぶ」ことが重要になってきます。

      具体的には、下記の点をチェックします。

      1. 都心部の物件を選ぶ
      2. サブリースも検討の余地あり
      3. タワーマンションの相続税対策効果は以前より薄い上にオススメできない
      4. その他の観点(流動性、利回り)

      ①都心部の物件を選ぶ

        具体的には、都心部の物件を購入することが重要になります。物件の価格が地方と比べて高く、より多額の評価額圧縮ができるためです。逆に地方の物件の場合、評価額より時価の方が低い場合さえあるので相続税対策としては向きません。

        ②サブリースも検討の余地あり

        相続税評価額は保有する物件の入居率(賃貸割合)が高ければ高いほど低くなります。サブリース契約を不動産管理会社と結んでいる場合、この入居率が100%となり評価額の確実な圧縮が期待できます。

        ただし、サブリース契約を結ぶ際は収益性の低下や、借り上げ賃料の変更などのデメリットも存在します。そのようなデメリットを把握したうえでサブリース契約を結ぶかどうかを判断してください。

        サブリース契約について、詳細はこちらをご覧ください。

        ③タワーマンションの相続税対策効果は以前より薄い上にオススメできない

        都心部の物件の中でも、タワーマンションを用いた相続税対策は有名です。特にタワーマンションの最上階は販売価格が高く、さらに相続税評価額は階数によって変化しなかったため、相続税を大きく圧縮できていました。

        しかし、現在は税制改正によりタワーマンションの中でも高層階になればなるほど評価額が高くなるよう改正が行われました。これにより、以前よりはタワーマンション高層階を活用した節税効果は薄れています。

        また、タワーマンションの場合利回りが低いためタワーマンション購入時の借入返済がアパートに比べて難しくなります。さらに、タワーマンションの場合は売却時に価格が大幅に下落している可能性もあるので注意が必要です。

        タワーマンションの相続税対策効果がないわけではありませんが、以前より効果が薄いこと、収益性が劣ることには注意が必要です。

        ④その他の観点(流動性、利回り)

        その他、下記の観点にも注意が必要です。

        ・流動性

        相続税対策で購入した物件は、相続発生後しばらくしてから、最終的に換金をしなくてはなりません。もちろん、家賃収入を相続人が得続けることも可能ですが、ある程度まとまったお金として受け取ろうと思えば換金が必要になります。

        よって、流動性が高い(売却が用意)物件を選択する必要があります。この観点から見ても、地方より都心の物件が相続税対策に向いています。

        ・利回り

        相続税対策で購入した物件は、相続後に約4年間保有する必要があります。相続後、相続税申告までの10カ月ほどは当然保有していなくてはなりません。さらに、その後すぐに物件を売却してしまうと税務調査で租税回避行為とみなされ、収益物件としての評価が否認され時価での評価となってしまいます。このような否認を回避するために、申告後3年ほどは物件を保有しなくてはなりません。10カ月+3年で、約4年間物件を保有する必要があります

        このように、長期にわたって物件を保有する必要があるため、利回りをある程度確保しなければ物件収支が赤字になってしまいます。この観点から見ると都心より地方の物件の方が優れています。ただし、評価額の圧縮や流動性では都心の物件の方が優れていますので、都心で利回りをある程度確保できる物件を買うことが重要になります。


        4.おわりに

        いかがでしたでしょうか。ここまで、物件情報をどう仕入れどうチェックするかについてお伝えしました。不動産は土地に固着し、移動することはできません。それゆえ、一つ一つの物件がその個性(強みやリスク)を持っています。「個別性」が強い不動産のよしあしを判断するのは簡単ではありません。

        しかし、ここまで読んだあなたはすでに物件の目利き力が身につき始めていることでしょう。この記事に書かれたことをもとに、ぜひ不動産投資の世界に飛び込み、そして成功をつかんでください。

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