「アパートを売却したいが、どれくらいで売れるか知りたい」
「築30年のアパートの相場ってどれくらい?」
と疑問に思っていませんか?
「売却相場」はアパートを売却するときにいちばん最初に気になると思います。様々な事情で早く売却したいとは思っていても、できるだけ高く売りたいと思うのが人情です。
まず初めに、不動産には同じものが存在しないため定価がなく、取引ごとに金額が決まります。間取りや築年数はもちろんのこと、構造や所在エリアになど様々な要因により相場は決定します。
当社の場合、5,000万円~2億円くらいで買い取ることが多いですが、前述のとおりケースバイケースです。そこで本記事では当社の実際の買取データとアパート売却における相場の求め方、さらに高く売るポイントについてご紹介します。
目次
1.アパートを売却した際の相場
先述の通り不動産には同じものが存在しないため定価はありません。しかし物件の還元利回り(物件周辺の実質利回り)と1年間の利益(年間家賃収入-年間経費)が分かれば、物件のおおよその価格を求めることができます。
還元利回りとは不動産がもたらす投資利回りのことで、1年間の利益を還元利回りで割り戻すことで物件の相場を求めることができます。(この方法を収益還元法と言い、2章で詳しく説明します。)
たとえば1年間の利益が400万円で還元利回りが8%の場合、物件価格は400万円÷8%=5,000万円となります。本章では当社の一棟アパート買取時(満室想定)の利回りをエリア別、構造別、築年数別に紹介します。
1.1.エリア別の買取価格の相場
構造や築年数、間取りが似た物件で、エリアが違う物件の利回りを比較したとき、都心に近いほど利回りが低くなる傾向にあります。
なぜなら、利回りの計算に使用する物件価格は都市部の方が高くなるからです。物件価格が都市部の方が高く理由は2つあります。一つ目は入居付けが容易になる、敷金・礼金を取りやすくなる等の利便性があるから、二つ目は物件価格が下がりにくい、もしくは上がるといった資産性があるからです。
下表は当社における実際の買取事例です。エリア別に見た場合、都心に近いほど利回りは低くなる傾向にあります。
上記の物件Bは春日部駅徒歩20分にある木造一棟アパートで、6,300万円で買い取りました。自分の物件がどのエリアにあるのか、都心までのアクセスはどうなのかを考慮すると、より精密な相場が得られます。
1.2.構造別の買取価格の相場
物件の構造によっても利回りは異なります。築年数やエリア、間取りが似た物件では、一般的に木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の順に利回りが低くなる傾向にあります。これは木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の順に劣化しにくく、建物の評価額が下がりにくいことが要因の一つとして挙げられます。
以下に同じエリア(埼玉県所沢市)における構造別の買取事例を記しますので、参考にしてみてください。
鉄骨造の物件Fは1億6,000万円、鉄筋コンクリート造の物件Gは7,250万円で買い取りました。買取金額に大きな差が出るのはその物件の規模(間取り、戸数)によるところが大きいため、あくまでも構造によって利回りがどれくらい違うのかに着目しましょう。
1.3.築年数別の買取価格の相場
以下に不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」より、首都圏の築年別平均利回り推移を示します。築年数別に見た場合、一般的には築浅物件の方が利回りは低くなります。これは築浅物件の方が家賃が高くなる傾向にあるからです。
引用:「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや ) 」
築10年未満の一棟アパートだと平均利回りは6%台、築20年以上の場合平均利回りは約9%となります。ご自身の物件と比較し、相場の目安として参考にしてみてください。
ここまで利回りの話をしてきましたが、利回りも物件価格の相場も自分で調べるのはめんどう!という方は以下の無料買取査定フォームよりお申込みください。
2.アパート売却の相場の求め方
本章では収益還元法によりアパートの売却価格相場を具体的に求めていきます。
収益還元法とは「その不動産にどれだけ稼ぐ力があるのか?」をもとに物件価格を算出する方法で、2種類の算出方法があります。
・DCF法
今回は簡便的で最もポピュラーな直接還元法によりアパート価格の相場を算出します。以下の記事で詳しく説明しているため、本章では概要のみ記載いたします。
直接還元法による不動産価格の算出方法は以下の通りです。
1年間の利益
1年間の利益とは、年間家賃収入-年間経費のことです。正確な家賃収入を把握するためには、不動産の管理会社からレントロールをもらうとよいでしょう。
また、経費については正確に把握するのが難しい場合、家賃収入の20%~30%が経費になるという目安で大丈夫です。
還元利回り
還元利回りとは、不動産がもたらす投資利回りのことで、キャップレートとも呼ばれます。還元利回りの目安は、立地や築年にもよりますが賃貸用住宅なら5~8%程度です。
たとえば還元利回り6%を見込めるアパートがあった場合、年間の予想利益が600万円なら、収益還元価格は600万円÷6%=1億円となります。
以下に利回りからアパート価格の相場を求める調べ方を2つご紹介します。ご自宅ですぐにできる方法ですので、参考にしてみてください。
2.1.「楽待」を使い相場を求める
「楽待」は会員登録者数が32万人超、6万件以上の物件情報を掲載している国内最大の不動産投資情報サイトです。所有物件と似た条件で売りに出されているアパートの利回りを調べることにより、相場を把握することができます。
今回は以下の物件を例に具体的な相場の調べ方を説明します。
エリア:埼玉県上尾市(上尾駅徒歩20分)
構造:木造
築年数:30年
1年間の利益:480万円
ステップ① 「収益物件を探す」で物件情報を入力し検索する
「収益物件を探す」ページの「地域から探す」で、所在地、物件種別、構造など、所有している物件情報を入力します。今回は「上尾市」「一棟アパート」「築30年以上35年以下」「木造」を条件に入れて検索します。
ステップ② 利回りを比較する
検索すると条件に合う現在売りに出されている物件情報が表示され、今回の場合利回りは6.85%~8.10%でした。
ここで「楽待」の掲載事例は実際の成約事例ではないため注意が必要です。掲載されているのは売主の希望価格であり、実際には物件価格が低くなる場合があります。(よって利回りは1%~2%ほど上がると考えてよいでしょう。)
比較してみると「実際の還元利回りは9%くらいかな」とおおよその値がわかります。
ステップ③ 相場を求める
還元利回りを9%と仮定すると、今回の上尾市一棟アパートの収益還元価格は480万円÷9%で「相場は5,300万円くらいが妥当だろう」と目星をつけることができます。
「そもそも売却価格が載っているなら、戸数も入力して所有物件の同じような物件の相場を求めた方がいいのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし戸数が同じ物件だとしても、物件価格決定の大きな要因となる1年間の利益が異なります(家賃やかかる経費が物件によって違うため)。そのため戸数や規模に左右されにくい利回りを比較して相場を求める方法をお勧めします。
2.2.「健美家」を使い相場を求める
「健美家」は不動産投資および投資用物件情報サイトであり、5万件以上の収益物件価格情報を掲載しています。WEBサイトそのもののコンテンツに有意義なものが多く、不動産に関するさまざまな角度から知識を得ることもできます。
「健美家」も「楽街」同様に、所有物件と似た条件で売りに出されているアパートを調べることにより、相場を求めることができます。
以下の物件を例に具体的な相場の調べ方を説明します。
所在地:神奈川県川崎市(駅徒歩20分)
構造:木造
築年数:30年
1年間の利益:540万円
ステップ① 「収益物件を探す」で物件情報を入力し検索する
「収益物件を探す」サイト画面の左側にある「収益物件検索」のチェックボックス欄に所有物件の情報を入れて検索します。
今回は「川崎市」「一等売りアパート」「築25~35年」「木造」を入力します。
ステップ② 利回りを比較する
検索すると現在売りに出されている物件情報が表示され、今回の条件だと利回りは6.95%~9.25%でした。
ここで「楽待」同様、「健美家」の掲載事例も実際の成約事例ではないため注意が必要です。掲載されているのは売主の希望価格であり、実際の還元利回りは1%~2%ほど上がると考えてよいでしょう。今回の場合、還元利回りは10%程度と見積もることができます。
ステップ③ 相場を求める
川崎市一棟アパートの還元利回りを10%と仮定すると、収益還元価格は540万円÷10%=5,400万円くらいが相場だと求めることができます。
3.アパートを相場より高く売るポイント
収益物件の評価方法として一般的である収益還元法においては、下記2つの方法を実践することで物件を売却する際の不動産価格を高めることができます。
この方法は当社でも物件の売却のご相談をいただく際に実際にご提案している手法です。
3.1.家賃収入を多くする
収益還元法では家賃収入をベースに不動産価格を算出するため、「いかに家賃収入を多くするか?」がカギとなります。
たとえば、Aアパートの年間家賃収入が1,000万円、Bアパートの年間家賃収入が800万円、両物件とも同じ還元利回り10%だった場合を考えてみましょう。
なお、経費については一般的な不動産経費率と言われる20%をもとに算出することとします。
Aアパートの収益還元法上の不動産価格は、
(家賃収入1,000万円ー経費1,000万円×20%)÷10%=8000万円
Bアパートの収益還元法上の不動産価格は、
(家賃収入800万円ー経費800万円×20%)÷10%=6400万円
となり、家賃収入の多いAアパートの方が1600万円ほど不動産価格は高くなります。
家賃収入を多くするためには、以下の2点が重要になります。
・高い家賃で入居者を入れる
入居率を上げる
入居率を上げる(できる限り満室にする)のは、家賃収入を多くするためのオーソドックスな手法です。
入居率を上げるためには、現在の管理会社から入居付けに強い管理会社に変更したり、入居者募集のしやすい部屋作りをしたりするとよいでしょう。
また、入居率の高い状態の時に売却をするというのもひとつの手です。物件の売却を視野に入れ始めたら、ご自身の物件の入居率が一番高い時に売り出すとよいでしょう。
高い家賃で入居者を入れる
入居者を募集するにあたっては、家賃を少しでも高くすることが重要なポイントになります。
たとえば家賃が1部屋だけ5000円あがったとすると、もともとの年間家賃収入から、5000円×12か月=6万円アップします。
そうすると、家賃アップ分の年間家賃収入6万円÷還元利回り10%=60万円 となり、5000円高い家賃で入居付けをするだけで、不動産価格が60万円も上がることになります。
家賃を高く入居付けするためには、同じエリア、同じスペックで周囲にある競合物件と家賃帯と、インターネット無料や独立洗面台等の設備をつけている同じエリアや似たようなスペックの競合物件の家賃帯を比較検討し、高い家賃で入居募集ができている物件の設備を取り入れて入居者募集をするとよいでしょう。
3.2.建物の外壁改修工事する
建物の外壁は、賃料の次に重要です。理由は以下の2つが挙げられます。
建物の保護のため
外壁を改修工事することで風雨、紫外線から外壁材を守ることができます。外壁を守ることで構造体を含め建物内部を守り、建物の長寿命化による物件価値下落の防止につながります。
美観の保全のため
苔、カビなど劣化部を除去することで、美観を取り戻すことができます。結果的に入居者を確保でき、安定した家賃収入によるレントロールの改善につながります。
もし外壁の劣化を放置してしまうと、内部漏水や構造体の腐食に繋がり、物件価格が下がってしまいます。
漏水による下地の腐食
漏水による外壁の落下
多少費用がかかったとしても、建物の表面だけでも塗装することは物件価格を高めるうえで有利に働きます。
さいごに
アパートを売却する前に、近隣の物件や条件の近い物件の還元利回りを調べ、売却価格の相場を求めましょう。そしてご自身の売却希望価格が妥当であるか、相場とかけ離れてないかを見極めます。
不動産会社によっては自社を有利に見せるため、しっかり調査せず、高額な査定金額を提示してくるところがあります。このような不動産会社を避けるためにも相場を売主自身が把握しておきましょう。
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