不動産投資は、少ない手間で始められる投資で、近年ではサラリーマン大家などという言葉も出ているほど、ポピュラーなものになっています。しかし、誰もが安定して収益を得、不動産投資を成功させられるわけではありません。
思うように部屋が埋まらずに家賃収入が減少、さらにローンの返済が難しくなって自己破産、という最悪の結末を迎える人も実際には約1.3%ほどの割合で存在します。
自己破産をすると、所有していた不動産や財産が無くなるのは勿論、追加で金融機関からお金を借りられなくなる、またクレジットカードを作れなくなるなど信用を失ってしまいます。
手軽そうに見える不動産投資ですが、「自己破産」のリスクがあるということを十分に理解しながら物件選びや会社選びをしていただきたいと思っています。
本記事では、
・不動産投資で自己破産する人がどれくらいいるのか
・不動産投資で自己破産する人の特徴
・自己破産するとどうなるのか
以上について、解説していきます。
目次
1.不動産投資での自己破産率はおよそ1.3%
不動産投資での「破産」とは、物件の運営がうまくいかず、物件購入時に組んだローンの返済が滞ってしまうことを指します。不動産投資では、不動産を売却しても借金が残ってしまう場合、法的な措置「自己破産」という選択を取ります。
不動産投資で自己破産する人がどれくらいいるのか、気になっている方も多いと思います。実は、不動産投資での自己破産率という数字は公表されていません。しかし、東京商工リサーチが発表している「リスク管理債権状況調査」の結果を利用すると、自己破産率がどれくらいか推測することができます。
「リスク管理債権状況調査」によると、国内107銀行の2021年3月期決算で、「リスク管理債権比率」は1.33%となっています。
「リスク管理債権」とは、何らかの理由により、返済されないなどの貸出金のことであり、「リスク管理債権比率」とは、貸し出されている全債権の中で、返済が滞納されている債権の割合のことを指します。
自己破産する人は、最終的に借りているローンの返済の滞納が積み重なってしまうため、この「リスク管理返済比率」は自己破産率と近い数字と思っていただいてよいでしょう。
自己破産率は約1.3%
2.不動産投資による自己破産では、免責(借金を帳消しにすること)が認められることが多い
不動産投資で自己破産に陥ってしまったとき、重要になるのは「免責があるのか、ないのか」です。免責とは、「借金を帳消しにすること」です。
基本的に、不動産投資で自己破産を選択した場合、免責は認められることが多いですが、場合によっては免責が許可されない場合もあります。
破産法によると、以下の場合に免責を許可しないとしています。
たとえば物件を購入してすぐに売却する、などといった無計画な不動産投資を繰り返したりしていると、免責が許可されない可能性があります。また破産法では、「破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。」など破産手続きにおける不誠実な態度なども、免責が許可されない理由となることがあります。
3.自己破産する人に共通している失敗6つ
不動産投資で自己破産をしてしまうのには、理由があります。第2章では、自己破産する人に共通している失敗6つについて説明します。
もし、すでに不動産投資を行っているあなたが以下のような状態の場合、自己破産に向かって進んでいる可能性があります。
・諸費用や維持費の見通しが不十分で、返済に充てるために自己資金を切り崩すようになった
・フルローン、オーバーローン、高金利でのローンを利用しており、月々の返済額に収入が追いつかなくなった
・空室の状態が続いて、月々の返済を家賃収入から賄うことができなくなった
3.1.買主に不利な契約をしてしまい、余裕を持った返済ができなくなった
1つめの失敗は、「買主に不利な契約をしている」ことです。
知識の少ない不動産投資初心者にとっては、締結しようとする契約が自分にとって不利になるのかどうか、判断が難しい場合が多いです。購入する物件のエリアや価格、賃料設定などが「きちんと収益を得られるものか」「相場と合っているか」という判断は素人には難しく、特に押しの強い不動産会社の営業マンに勧められるがまま購入してしまうことも少なくありません。
その結果、相場よりも高い価格で購入してしまっていたり、相場と合わない賃料設定をしたためなかなか入居が決まらなかったりして、結果的にキャッシュフローが出ず返済が難しくなってしまうのです。
3.2.諸費用や維持費の見通しが不十分で、返済に充てるために自己資金を切り崩すようになった
2つ目の失敗は、「諸費用の見通しが不十分である」ことです。
当然、不動産投資で収益を得るためには収入が支出を上回っていなければなりません。しかし、諸費用や維持費の見通しが不十分でリフォーム代などの費用が大きくなってしまった場合や月々のローン返済額が大きい場合、収入より支出が大きくなってしまいます。結果、家賃収入から返済金に充てることができずに自己資金を切り崩すようになります。この状態が続けば、自己資金も底をつき破産への道を辿ることは自明です。
3.3.フルローン、オーバーローン、高金利でのローンを利用しており、月々の返済額に収入が追いつかなくなった
3つ目の失敗は、「フルローン、オーバーローン、高金利でのローンを利用している」ことです。
「フルローンで物件を買えます」「オーバーローンが出ます」などという言葉をよく目にすることがあります。たしかに、自己資金を出さずに物件を取得できるのは、購入する人にとっては魅力的に思えるかもしれません。しかし、フルローンやオーバーローンにはリスクが大きいのです。
借入の割合が大きいと、それだけ月々の返済額が大きくなります。想定外に物件の空室が増えた時や家賃滞納が増えた時のキャッシュフローが悪くなりやすく、赤字経営に陥りやすくなります。フルローンで物件を購入することのデメリットについて、こちらの記事で詳しく解説しています。
また不動産投資で組むローンは高額であるため、少しでも高い金利で借りていると、利息額が高くなり、月々の返済額が大きくなります。
3.4.空室の状態が続いて、月々の返済を家賃収入から賄うことができなくなった
4つ目の失敗は、「空室が続いている」ことです。
不動産投資での収益の柱は「家賃収入」であることは言うまでもありません。空室が続き収入源である家賃額が減少してしまった場合、当然キャッシュフローは赤字になりやすくなります。特に空室リスクの高いワンルームマンションを購入している場合は、赤字のリスクも高まります。
4.不動産投資ではどうやって自己破産していくのか
不動産投資で自己破産することになる人は、どのような流れを経て破産に陥ってしまうのでしょう。
4.1.収入減少によって赤字経営、返済に自己資金を充てる
まずは、第2章で挙げたような家賃の減少や収入を上回る雑費や修繕費などの支出によって、赤字経営に陥ります。すると、物件から得られる家賃収入でローンの返済を賄うことができず、自分の貯蓄からローンの返済額を拠出することになります。
4.2.督促状が届く
そして自己資金も尽きると、ローンの返済が滞るようになり、滞納から約1ヶ月が経過すると、金融機関から返済を要求するの督促状が届きます。さらに2ヶ月、3ヶ月が経過すると、電話や訪問での督促も始まります。その時点で信用情報に傷がつくこともあり、クレジットカードなどの作成などが難しくなるケースがあります。
4.3.不動産の売却や競売が行われる
滞納が4ヶ月から半年程度続くと、債権が金融機関から債権回収会社に移ります(金融機関が債権を売却)。すると、債権回収会社が物件を売却、または競売にかけます。
競売にかけられると、相場よりも安く売りに出されることが多いため、残債から売却費を差し引いた額は借金として残ることになります。
物件の購入時に借りたローン返済ができなくなるなど、不動産を担保にした借入金等の債務履行ができなくなった場合に、債権者の申し立てによって、地方裁判所が競売を行う制度。
4.4.売却しても借金が残る場合は、自己破産を選択する
3.3.で物件を売却しても借金が残ってしまった場合には、自己破産という選択をすることになります。
弁護士に依頼し、そこから自己破産の手続きが始まります。裁判所での面接で自己破産に至った経緯などを説明したり、財産の売却によって債権者に現金を配当したりします。
5.自己破産した人の身に起こること
自己破産すると、破産者の身に何が起こるのでしょう。自己破産の怖さを知っておくことが大切です。
5.1.債務がなくなる(借金がなくなる)
自己破産すると、全ての債務がなくなります。これは、自己破産の唯一のメリットと言えます。ただし、債務に入らない費用(税金など)は免責になりませんので、注意が必要です。
5.2.財産が処分される
自己破産すると、財産の大部分が処分されます。99万円以上の現金と、自宅や自動車、貴金属など、時価総額20万円以上の財産は、自己破産の際に処分しなければなりません。
5.3.官報に名前が掲載される
官報とは、各政府や省庁が発表する公文や公告などを掲載する新聞のようなものです。自己破産すると、この官報に名前が掲載されます。官報には、破産手続きの内容や氏名などが掲載され、インターネットでも、直近30日間の掲載分が閲覧できます。そのため自分の周囲の人に、「自己破産した」という事実が知られてしまうといったデメリットがあります。
インターネット版の官報はこちら
5.3. 信用情報機関(ブラックリスト)に登録される
自己破産すると、信用情報機関のデータに事故情報、ブラックリストとしてその情報が登録されます。
信用情報機関とは、金融会社が加盟している期間で、登録されているデータは住宅ローンを組む際の審査などに利用されます。
自己破産すると、その情報は信用情報機関に登録され、機関に加盟している銀行などにも共有されるため、1ヶ所の金融機関で借りて自己破産すると、他の金融機関から追加で借入を行うこともできなくなります。
6.自己破産を防ぐには、綿密な計画設計を
ここまで自己破産になるまでの流れ、自己破産した後に起こることについてお話してきました。自己破産は最悪の手段になりますので、不動産投資を行う際は常に自己破産を防ぐための対策を取らなければなりません。最後に、自己破産を防ぐ方法についてお話します。
6.1.不動産投資の知識を身に付け、リスクを理解する
不動産投資を始めるときには、知識を身につけ、リスクを十分に理解しなければなりません。これを怠って購入から運営を不動産会社に丸投げしてしまうと、悪質な不動産会社のカモにされてしまい物件を相場よりも高く購入してしまう、身の丈に合わない物件やローンをあっせんされてしまうことなどがあります。不動産会社からの提案を、深く考えずに鵜呑みにしてしまわないよう、適正な価格や利回りなどの知識、またリスクは十分に理解した上で行動しましょう。
6.2.収支のシミュレーションを綿密に行う
物件を購入するときは、収支のシミュレーションを綿密に行いましょう。不動産投資を行う人のほとんどはローンを利用することになります。購入する物件の収益でローンの返済が問題なくできるのか、月々の返済額が収入を上回ることがないかなど、シミュレーションを利用して確認することが大切です。
6.3.信頼できる不動産会社を見つける
最後は、信頼できる不動産会社を見つけることです。世の中には数え切れないほどの不動産会社がありますが、中には知識のない初心者を騙すようにして利益を得ている会社もあるのが残念な事実です。そういった会社のカモにされないよう、物件を探す前にまずは信頼できる不動産会社を探すことをおすすめします。
当社では、無料の不動産投資相談を実施しています。ご自身の年収などの状況に合わせてオーダーメイドのシミュレーションをお作りすることもできますので、失敗しない不動産投資を始めたい方はぜひお問い合わせください。
7.さいごに
本記事では、不動産投資での自己破産について解説しました。不動産投資は、サラリーマンでもできる投資として人気ですが、一方でリスクもあることがお分かりいただけたと思います。資金を投じて物件を購入したにも関わらず、手放すことになったり、自分の資産を失ったりすることもある不動産投資。
最初にお伝えした通り、賃貸経営がうまくいかず自己破産を選択する人はわずかではありますが、購入する物件を誤ったり、シミュレーションを確認せずに購入すると、1.3%の中の一人になってしまうかもしれません。自己破産が不安で不動産投資に踏み切れていない方へのアドバイスとして活用いただけると幸いです。
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