不動産の登記は自分でできないと思っていませんか?
司法書士に代理を依頼することもできますが、自分で登記を行うこともできます。
本記事では不動産登記を行うにあたっての必要な書類の集め方について、
誰が、どこで、どのように取得できるのかを解説します。
以下の表では収益不動産に関わる登記とそのために必要な書類についてまとめています。
まずはこの表を見て、自分が登記をする際に何の書類が必要なのか確認してください。
目次
1.どの登記にも共通して必要な書類
収益用不動産の登記をする際は、「登記申請書」「本人確認書類」「印鑑証明・実印」「住民票の写し」が必要になります。
1.1.登記申請書
登記申請書とは、登記を法務局に申請するための書類です。
特定のフォーマットはありませんが、登記ごとに記入する必要のある内容が異なります。
以下のページからダウンロードできますので、行いたい登記に適切な申請書を選択して記入を進めてください。
法務局「不動産登記の申請書様式について」
1.2.本人確認書類
パスポートや運転免許証、個人番号(マイナンバー)カード等の本人確認書類の中から一つ提示が必要です。
1.3.印鑑証明・実印
登記申請時に実印と印鑑証明を同時に提出することで「確実に本人が押印した書類」であることを証明します。
印鑑証明は役所や証明サービスコーナーなどの窓口で取得できますが、マイナンバーカードをお持ちの方はコンビニでも発行可能です。
1.4.住民票の写し
住民票の写しは役所や証明サービスコーナーなどの窓口で取得できますが、マイナンバーカードをお持ちの方はコンビニでも発行が可能です。
以下の章からは登記別の必要書類について、だれがどのように取得するのかを解説していきます。
2.建物を新築した時に必要な書類(表題登記)
表題登記はこの建物がどんな建物かを示す登記です。
持っている土地の上に新たに物件を新築したり、新築の物件を購入した際は、「所有権保存登記」を行います。
この場合、物件を建設してから1か月以内に登記しなければいけません。
2.1.所有権証明書(工事完了引渡書・検査済書)
物件が登記申請者の所有物であるという確認書類です。
建物の新築・増築工事を行った際に、建築工事が完了し建物を建築主に引き渡した証明として発行されます。
登記人本人が建設を依頼したハウスメーカーや工務店に依頼することで取得でき、「建物引渡証明書」「建築工事完了引渡証明書」「工事引渡証明書」等の名称で発行されることもあります。
以下の記事で検査済証について詳しく解説しています。
2.2.建物図面・各階平面図
物件の特徴を示す書類です。
一般的に、建物図面と各階平面図をまとめて、「建物図面」と呼びます。
建物図面とは建物の形状および敷地との位置関係を示した図面を指し、各界平面図は各階の形状を示し、床面積等を記載した図面です。
自力で登記する場合には、登記人本人で作成する必要があります。
2.3.公図
地図に比べ大まかに土地利用の情報を表した図面のことです。
公的な書類ですので入手したい場合は該当不動産を管轄する法務局へ取得の申請を行います。
2.4.建物が位置する地図
公図では表示できない詳細な地図を用意する必要があります。
グーグルマップ等を印刷したもので対応可能です。
3.建物を新築した時、新築物件を購入した時に必要な書類(所有権保存登記)
所有権保存登記は物件の所有者が誰であるかを登録するための登記です。
特に、投資用アパートを新築した際や、新築の物件を購入した際に行います。
3.1.表題登記完了証または登記事項証明書
表題登記完了証とは表題登記が完了した際に登記が完了した旨を証明する書類のことで、
登記事項証明書とは不動産の所有者や、その他不動産についての情報が記載されたものです。
表題登記完了証は登記が完了した際に交付されます。また、登記事項証明書は法務局やオンラインの申請で誰でも取得可能です。
こちらから申請が可能です。
3.2.住宅用家屋証明書
※この書類は必須ではありませんが、提出することで登記費用を抑えることが可能です。
住宅用家屋証明書は登記する建物が住宅用家屋であること、減税規定に適合することを証明する書類で、市区町村長が発行しています。
取得には物件の所有者本人が役場の税務関係窓口にて申請する必要があります。
申請の際に証明として住宅用家証明申請書、住民票、建築確認済証、建物図面、表題登記完了証が必要なので注意してください。
4.中古物件を購入したときに必要な書類(売買による所有権移転登記)
収益用物件を売買で取得した場合は以前の所有者から変更する必要があります。
この時、物件を取得した側が用意する必要があるのは身分証明書のみです。
購入者が法人の場合は別途代表者事項証明書又は会社登記簿謄本が必要になります。
5.物件の相続を受けた時に必要な書類(相続による所有権移転登記)
相続で物件を取得した際は、登記に多くの書類が必要です。
取得に多くの手順を費やすものもあるので相続人全員で協力して書類を集める必要があります。
5.1.登記済証(権利書)または登記識別情報通知書
登記済証(権利書)は登記が完了した際に登記名義人に交付される書類で、登記の内容を証明する書類です。
登記識別情報通知書とは登記済証に代わる書類で、所有権が変わった際に新たに所有者となる者に登記所から通知される書類です。
登記情報とはアラビア数字と符合の組み合わせからなる12桁のパスワードで、不動産及び、登記名義人となった申請者ごとに定められるものです。
相続による所有権移転登記の場合は、登記済証、登記識別番号通知書は被相続人が登記を行った際の証明書を指します。
相続人が発行の手続きをする必要はありませんが、被相続人の荷物の中から探し出す必要があります。
5.2.固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、土地や建物など、固定資産税の課税対象となる資産についてその評価額を証明する書類です。
市役所の窓口で申請するほか、郵送で誰でも取り寄せることができます。
相続の場合は相続関係が確認できる戸籍謄本や財産分割協議書などの書類を用意する必要があります。
5.3.被相続人の戸籍謄本・除籍謄本
戸籍謄本は「本籍」と「戸籍の筆頭者の氏名」、その戸籍に入っている人全員の「氏名」「生年月日」「父母の氏名と続柄」とそれぞれの人に関する「出生事項」「婚姻事項」などの身分事項が記載されている書類です。
除籍謄本は、(結婚、離婚、死亡等により)戸籍に記載されている全員がいなくなった戸籍の写しのことを指します。
相続人の代表者が、被相続人の本籍地の役所にて取得しなければいけません。
5.4.相続人の戸籍謄本
相続人全員分の戸籍謄本が必要です。本籍地の役場の窓口や郵送での取り寄せが可能です。
5.5.家系図
家系図とは一族の代々の系統を書き表した図を指します。
記入するべき内容は
〇住所
〇出生(死亡)日
〇相続人or被相続人のどちらか
〇氏名
の4点です。
被相続人は氏名、住所、死亡日、被相続人である旨
相続人は氏名、住所、出生日、相続人である旨
を記載する必要があります。
書式に指定はありませんが、上記の内容を盛り込んで作成してください。
5.6.遺言書
被相続人が作成した遺言書が必要です。
遺言書とは公正証書遺言の正本、検認済みの自筆証書遺言・秘密証書遺言の原本のことを指します。
自筆証書遺言と秘密証書遺言については、家庭裁判所の検認という手続きが必要なので、もし発見しても勝手に開封をしないように注意が必要です。
なお、公正証書遺言では公証人があらかじめ内容を確認し、原本を保管しているので検認の手続きは不要です。
6.所有する物件をローンの担保に設定した時に必要な書類(抵当権設定登記)
抵当権とは住宅ローンなどを借りるときに、購入する住宅の土地と建物に金融機関が設定する権利のことです。
いわゆる「担保にとる」というときの担保と似た意味です。
ローン期間中の借り手、貸し手双方の保護のため、抵当権を設定する際も登記が必要になります。
6.1.登記済証(権利書)または登記識別情報通知書
登記済証(権利書)は登記が完了した際に登記名義人に交付される書類で、登記の内容を証明する書類です。
登記識別情報通知書とは登記済証に代わる書類で、所有権が変わった際に新たに所有者となる者に登記所から通知される書類です。
登記情報とはアラビア数字と符合の組み合わせからなる12桁のパスワードで、不動産及び、登記名義人となった申請者ごとに定められるものです。
6.2.抵当権設定契約書
抵当権設定契約書はローンの契約を組む際に発行される契約書です。
登記を行う際に抵当権を設定したことを証明する書類として使用されます。
抵当権設定契約書は銀行などの抵当権者がローン契約時に作成してくれます。
7.物件に設定されている抵当権が消滅した時に必要な書類(抵当権抹消登記)
抵当権を抹消する際にも登記が必要です。事実上はローンが完済していても、登記を行わないと抵当権は存在したままになってしまいます。
なにより、抵当権抹消の手続きを行わないと法的に不動産の正式な所有者になれません。
7.1.登記済証(権利書)または登記識別情報通知書
登記済証(権利書)は登記が完了した際に登記名義人に交付される書類で、登記の内容を証明する書類です。
登記識別情報通知書とは登記済証に代わる書類で、所有権が変わった際に新たに所有者となる者に登記所から通知される書類です。
登記情報とはアラビア数字と符合の組み合わせからなる12桁のパスワードで、不動産及び、登記名義人となった申請者ごとに定められるものです。
7.2.登記原因証明情報
ローンの完済時に金融機関等の抵当権者から交付される、「完済したことを証明」する書類のことです。
ローンを完済した際に抵当権者が作成するので、基本的には金融機関が作成してくれます。
7.3.抵当権者の委任状
銀行等の抵当権者に、抵当権抹消登記に関する委任状の作成を依頼します。
本来であれば、抵当権を設定している者が抵当権設定登記を行う必要があるところを、借りていた側(抵当権においては第三者)が登記を行うので、委任状が必要となるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
登記というとなじみが薄く、難しいものと感じがちになってしまいますが、
この記事を通して登記って思ったよりハードルが低いなと感じていただけたら幸いです。
とはいえ自分で必要書類を集めるには多くの時間と手間を要しますので、司法書士等専門家の力を借りることも選択肢の一つです。
自分に合った方法で登記手続きを進めてみてください。
また、登記に関する一般的なお話は以下の記事で解説しているので、併せてご覧ください。
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