世の中に、投資に関する本が何冊あるか知っていますか?
実は、Amazonで「投資」と検索すると50,000冊以上もの本がヒットします。
それだけの選択肢があると、「投資をするために本で勉強したいけど、何を読めばいいかわからない」と悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。
今の時代はTwitterやブログ、YouTubeなどでも投資に関する多くの情報を集めることができますし、本屋に行けば投資や資産運用関連の入門書が数多く並んでいるのを目にします。
それらは手軽でわかりやすい反面、(特にインターネット上の情報は)信憑性が定かではなかったり、内容があまり充実していなかったりするものもあります。
そんな玉石混淆の情報から、初心者が有益な情報を見分けるのはとても難しいでしょう。
そこで私がおすすめするのは、投資の「名著」といわれるような本を読むことです。
それらは世界中の投資家たちに長く読み継がれ、その内容に価値があると考えられてきたからこそ名著たり得ます。
「入門書やインターネットの情報でなんとなく理解したけど、もっと深く理解したい」と思った時には、それらの情報の「源流」ともいえる名著を読むことがきっと役に立つでしょう。
例えば「インデックス・ファンドに長期投資するのがよい」という情報だけ知っていても、その根拠まで納得して理解していなければ、いざ株価が暴落した時に焦って売ってしまうかもしれません。
ただ、名著を読むことは正しい知識を身に付ける上で非常に価値がある一方、そうした本は得てしてページ数が多かったり、難解に感じられたりするため、初心者の方がいきなり手に取るのはハードルが高いかもしれません。
そのためこの記事では、投資初心者の方でも比較的読みやすく、かつ役に立つ古典的な名著を厳選して紹介します。
私自身、学生時代から投資に興味をもち株式投資やFX投資をしていますが、名著といわれる本を何度も読み返すことが、自分の投資成績を伸ばすのに役立ったと感じています。
この記事で紹介する投資の名著は、以下の3冊です。
- 『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理』
- 『賢明なる投資家 - 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法』
- 『デイトレード』
初心者のあなたも、ぜひこれらの本を手に取ってみてください。そして、ある程度の知識が身に付いたら実際に投資を始めてみることをおすすめします。
一回目ではあまり理解できなかったことでも、投資経験を積むにつれて理解できるようになることはよくあります。
気に入った本が見つかれば、その後も何度も読み返してみてはいかがでしょうか。
目次
1.『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理』バートン・マルキール
本書は1973年の初版以来、半世紀にわたって読み継がれている全米150万部超のベストセラーです。内容はいたってシンプルで、「インデックス投資が最善である」と主張しています。
インデックスと連動した値動きを目指して運用される投資信託をインデックス・ファンドといい、それらに投資することをインデックス投資と呼んでいる。
著者のバートン・マルキールは、ウォール街の投資銀行に勤務した資産運用のプロであり、証券市場や投資家行動を専門とする研究者であり、個人投資家でもあるという3つの顔を持つ人物です。
そんな投資に精通した著者が、株式市場の歴史を踏まえながら、豊富なデータとともにインデックス投資の優位性をわかりやすく解説してくれる一冊です。
本の内容
本書の主張は「個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンド・マネジャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックス・ファンドを買ってじっと持っているほうが、遥かによい結果を生む」という一文に尽きます。
これは、「株価が短期的にどの方向に変化するかを予測することは不可能である」というランダム・ウォーク理論に基づく主張です。
本書の初版から50年近く経った今、この主張は実際のデータに裏打ちされています。
本書でも紹介されていますが、1969年から2018年までのS&P500インデックス・ファンドの運用結果は、プロが運用する投資信託の平均的な運用結果をなんと25%以上も上回っていました。
個人投資家はおろか、プロのファンド・マネジャーさえインデックス・ファンドを上回る運用結果を残せないというのは、利益を求めて市場で売買を繰り返している多くの人にとって、耳を塞ぎたくなる話かもしれません。
しかし、インデックス・ファンドが優れた投資法であるという事実は、私たち個人投資家にとってはむしろ嬉しい話だとも言えます。
なぜなら、インデックス・ファンドにひたすら積立投資をするだけで、プロの大半を上回る運用結果が期待できるからです。
インデックス投資のデメリットを強いて挙げるとすれば、非常に退屈な投資だということです。
著者自身が本書を「ゆっくりと、しかし確実に金持ちになる本」と表現するように、インデックス投資では市場平均と比較して異常に負ける可能性を排除する一方、異常に勝てる可能性も排除してしまいます。
すなわち、一晩にして大金を稼ぎ出すようなことはできないということです。
著者自身もインデックス投資が退屈であることは認めています。
妥協案として、少なくともポートフォリオの一定割合はインデックス・ファンドで運用する上で、いくつかのルールに従って自分の手で優良銘柄を探すのであれば、リスクを抑えることができると述べています。
この点については15章で詳しく触れられているため、インデックス投資の利点を理解した上で個別株にも興味がある方はぜひ読んでみてください。
おすすめポイント
これから投資を始めたい人にも、すでに投資をしている人にもおすすめしたい一冊です。
投資をする人のほとんどは、あわよくば短期間で大きな利益を得たいと考えているはずです。しかし、実際に投資で勝ち続けるのは難しいと感じている人も多いでしょう。
個別株投資を一切せずにインデックス投資だけをするのは退屈です(私もそう考える一人です)が、著者が薦める通り、一定割合はインデックス運用をするべきなのは間違いないでしょう。
そうした意味で、すべての投資家が読んでおく価値がある一冊だと言えます。
本書をおすすめする理由として、以下の3点を挙げます。
- 「長期的に市場平均を上回る成果を出すことは難しいため、インデックス投資をすべき」という主張が一貫して明快であること
- 豊富なデータに基づいていること
- 語り口がユーモラスで、単純に読み物として面白いこと
ランダム・ウォーク理論、そしてそれから結論付けられるインデックス投資がメインテーマですが、一見するとそれとは別の話題(過去のバブルの歴史や、ファンダメンタル分析・テクニカル分析など)について述べる部分もかなり多いです。
しかし、それらはすべて「インデックス投資が最も優れた投資法である」という主張につながっているため、読んでいて本質を見失うことはありません。
また、約500ページと分厚いため読むのが大変そうですが、小難しい話は少なく、語り口が面白いため初心者でも読みやすいと言えるでしょう。
章立てがはっきりしているため、頭から通して読むのではなく、まずは興味がある部分だけを読むだけでも、十分楽しめて学びも得られるはずです。
2.『賢明なる投資家 - 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法』ベンジャミン・グレアム
1章で紹介した『ウォール街のランダム・ウォーカー』はインデックス投資を勧めていますが、「やっぱり個別株でアクティブな運用をしたい!」という人も多いはずです。
そんな人におすすめなのが、かの有名なウォーレン・バフェットが「自分が読んだ投資関連のすべての本の中で最高の一冊」と絶賛する本書です。
ベンジャミン・グレアムはバフェットの師匠とされる人物であり、「バリュー投資の父」と呼ばれています。
1949年の初版から70年以上が経っていますが、本書で解説されている銘柄選択の手法は今なお役立つものであり、世界中の投資家に読まれ続けている古典的名著です。
本の内容
本書は個人投資家が投資戦略を決め、それを実行に移すための手法を初心者向けに解説しています。
投資の原理や投資家の取るべき姿勢といった点に重点を置いていますが、株式市場の歴史や証券分析の手法についても多くのページが割かれています。
グレアムは、「投資とは、詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動」とし、それ以外は投機的行動であると定義しています。
このことからわかるように、彼の投資法であるバリュー投資を簡単に説明すれば、「株価がその本来の価値を大きく下回っている割安な状態で買えば、長期的には良いリターンが期待できる」というものです。
したがって、株価の上げ下げを見て売買を繰り返すような投資とはまったくの別物です。
グレアムは、投資家を「防衛的投資家」と「積極的投資家」の2種類に分類しています。
防衛的投資家は、大きな損失のリスクを避け、また投資の手間を避けたいと考えるタイプです。一方で積極的投資家は、手間や時間を費やして魅力的な銘柄を選択し、より高いリターンを求めるタイプです。
(ただし、積極的投資家が実際に高いリターンを得られるかは疑問があるとしています。)
本書では、割安株を見つけるための財務分析の方法や、防衛的投資家・積極的投資家それぞれのための銘柄選択の指針などが解説されています。
おすすめポイント
インデックス投資の利点を理解した上で、それでも個別株投資にも挑戦したいという人におすすめです。
「投資」と「投機」は明確に異なるものであるといった考え方や、プロの財務・証券アナリストが運用するファンドも長期的には市場平均を上回ることはできないという主張は、『ウォール街のランダム・ウォーカー』と非常に似通っています。
そのため、『ウォール街のランダム・ウォーカー』をすでに読んでいる人は本書も読みやすいでしょうし、そうした背景を踏まえた上で、どのような銘柄選択をすればよいかが理解できるでしょう。
難点を挙げるとすれば、古い本であるため時代背景や証券分析の対象にされている米国企業が若干イメージしづらい点です。
しかし、銘柄選択の際の判断基準となる指標の見方などは丁寧に説明されているので、初心者でもきちんと理解できるでしょう。
仮に証券分析の細かい部分は理解しきれなくても、本書が解説の重点を置いている「投資に対する基本的な考え方・姿勢」を知るだけでも十分価値があります。
例えば、詳しい説明は割愛しますが
- 株式と債券の投資比率は50-50にするのが基本
- 「安全域」にある銘柄に投資する
- 複数の銘柄やドル・コスト平均法によって分散投資をする
といった実践的な考え方を学べます。
3.『デイトレード』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
個別株投資をする上では、手法を知るだけでは勝てるようにはなりません。
いざ投資を始めたものの、なかなか自分が思ったような売買ができずに悩んでいる人も多いでしょう。
そんな人には、投資のメンタル面に焦点を当て、多くのトレーダーから支持されている本書がおすすめです。
著者の2人は個人投資家でもあり、米国で有名なトレーダー養成機関の創業者でもあります。
本書は投資で勝つための「手法」ではなく、勝つための「思考」を教えてくれます。
だからこそ、タイトルにあるデイトレードに限らず、スキャルピングやスイングトレードをする場合にも役立つ内容が詰まっています。
『賢明なる投資家』で解説されているような長期投資とは少し毛色が違いますが、それでも投資をする上でのメンタルに関する部分は参考になるでしょう。
もちろん、株式投資だけでなくFXなど他の投資商品にも応用できます。
本の内容
マーケットで勝ち続けられるトレーダーになるための心構えを解説する1冊です。金言ともいえる数多くの教訓が紹介されています。
一方で、具体的な投資手法についてはほとんど触れられていません。
私自身、投資を始めたばかりの頃に本書を読み、印象的な言葉がいくつもありました。
例えば「まず知識を求めよ、利益はその次である」「取引で成功するためには人間性を捨てなければならない」などは、今も心に残っている言葉です。
本書の特徴としては、重要な点については何度も繰り返し述べられていることです。
これは、「ある表現ではどうしても理解できなかったことが、別の表現ならば、その真実と知恵が理解できるかもしれない。」と著者が考えているからです。
おかげで、本書を読み進めるうちに、勝ち組トレーダーの思考法がスムーズに頭に入ってくるでしょう。
おすすめポイント
本書をおすすめする理由は、ほぼすべてのトレーダーが直面する壁への対処法を教えてくれるからです。
その壁とは、一定の知識やテクニックが身に付いて「どのようにトレードすればよいか」がわかるようになっても、実際にそれを実行するのはとてつもなく難しいということです。
そしてその原因は、ほぼ間違いなくメンタル面にあります。
例えば「損切りは絶対にしなければならない」と頭では理解していても、いざ損切りをしようとすると精神的に苦しいものだと思います。
少額の損切りがどうしてもできずにずるずるとポジションを引っ張り、最終的に耐えられなくなって手放した時には損失が大きく膨らんでいた、という経験は誰しも少なからずあるのではないでしょうか。
本書を読めば、そうした問題に対処する方法を学ぶことができます。
本書は全部で10章に分かれていますが、さらに各章は多くの節に分かれています。
各節では投資における「教訓」が1つずつ見出しになっており、それぞれ1~2ページにコンパクトにまとまっているため初心者でも読みやすいです。
頭から順番に読まなくても、目次から自分が課題に感じているポイントと合致する章・節を見つけ、そこから読むのもよいでしょう。
また一度読み終わった後に、気になるところを再度読み直しやすいという点でも非常に優れています。
初心者がトレードを実践する中で問題にぶつかる度に、何度も読み直すような本になると思います。
一方で、具体的な投資手法を紹介している本ではないため、そうした内容を求めている人には向かないかもしれません。(もちろん本書の内容はすべてのトレーダーに役立ちますが。)
4.さいごに
投資に関する3冊の名著をご紹介しました。
インターネットなどでの手軽な情報収集と併せて、こうした読み応えのある投資の名著を読むことで、投資や資産運用への理解がより深まるはずです。
なお、インターネットでの情報収集では、金融庁のHPがおすすめです。
金融庁 投資の基本
また、このサイトでは他にも多くの書籍を紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
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