旧耐震基準と新耐震基準の違い|地震発生時の新旧基準の被害差と見分け方

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・中古物件は利回りが高くて魅力的だけど、建物の安全面は大丈夫だろうか。
・不動産ポータルサイトで「新耐震基準」「旧耐震基準」という記載を見かけるが、どんな違いがあるのだろう。

そんな気持ちで本記事をご覧になっていませんか。

不動産投資は、株式や投資信託のような資産運用に比べて価格の変動が少ない点が魅力ですが、現物資産に依拠しているために他の金融商品にはない様々な自然災害によるリスクがある点はデメリットといえるでしょう。

火災や台風などによる風災、洪水による水害などは、火災保険の活用によって被害に備えることができますが、地震に起因する災害については、損傷具合によって地震保険で被害額のすべてを賄うことができない場合があるのです。

そのため、結論からお伝えすると、中古物件を購入する場合は、「新耐震基準」の建物を選ぶことをおすすめします。
なぜなら、地震大国である日本において耐震基準は今後もとても重要な指標になるだけでなく、「旧耐震基準」が「新耐震基準」より長い目でみると維持をするために大きな費用がかかる可能性があるからです。

本記事では、それぞれ耐震基準の定義や、どのように判断すればよいかという指標を説明します。
また、「旧耐震基準」を所有した際に発生しうる費用についてもお伝えします。


1.旧耐震基準と新耐震基準の違い

地震に耐える建物の構造の基準を「耐震基準」と言い、建築物を設計する際に最も重視されている基準のひとつです。

簡単にお伝えすると、新耐震基準の方が地震に強い構造で、旧耐震基準は新耐震基準に比べると地震に弱い構造です。

新耐震基準と旧耐震基準の違いを簡単にまとめると以下のようになります。

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これまで大規模地震があるたびに耐震基準は見直されており、昭和56(1981)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準が「旧耐震基準」と呼ばれ、翌日の昭和56(1981)年6月1日から適用されている基準が「新耐震基準」と呼ばれています。これらを区別する略称として、「旧耐震」「新耐震」という様に、呼び方が分けられています。

建築確認とは
建築物の建築計画が建築基準関係規定に適合しているかどうかを、着工前に行政が審査すること。

以下で詳しく説明します。

1.1.旧耐震基準は建築確認日が1981(昭和56)年5月31日までのもの

1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準のことを旧耐震基準と呼び、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準として設定されています。

現実に日本で起きている地震の大きさを考えると、この基準に辛うじて適合しているレベルの耐震性しか持ち合わせていない物件の場合、地震での倒壊リスクが比較的高いといえるでしょう。

1.2.新耐震基準は建築確認日が1981(昭和56)年6月1日以降のもの

1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認において適用されている基準のことを新耐震基準と呼び、「震度6強、7程度の地震でも倒壊しない水準」であることが求められる耐震基準です。

日本ではこの水準の地震も「頻発する」とは言い難いですが、旧耐震基準と比較すると新耐震基準で建築された物件の方が信頼性は高いのは一目瞭然といえます。


2.新耐震基準か旧耐震基準かの見分け方

新耐震基準か旧耐震基準かの境目になるのは、建築確認日(建築確認申請が受理された日)です。
建築確認日は物件購入前に調べるのは難しいため、所有者に聞くのが早いでしょう。

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所有者が建築確認申請日を調べる時は「確認通知書(副)」の発行日を見ます。
「確認通知書(副)」は、建築申請が受理された際に申請主に返却をされる書類です。

建築確認申請とは
建物の名称、用途、どのような構造物で、面積や階数がどのようなものかといった情報を、図面と共に提出して、建物が合法であるかどうかを確認するために、建物を建築する前に役所に書類を提出すること。

確認通知書:
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図面をしまうための封筒の表鑑に貼られている事や、図面と一緒にホチキスで綴じられている事が多く、ボロボロになっていることが多いです。この「確認通知書(副)」は平成2年4月27日に受理しており、新耐震基準となります。

完了検査済証:
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完了検査済証は、はがきの裏面に記載されています。この建物は、検査が平成3年6月4日に完了していますが、確認月日は検査完了日から約1年前の平成2年4月27日です。本例ではいずれにせよ新耐震基準ですが、建築確認申請日から検査完了日までタイムラグがあるため、新旧基準を確認する際には注意が必要です。
なお、検査済証だけでは建物の概要が書かれておらず建物を特定するのは難しいため、「確認通知書(副)」の確認が必要です。

「確認通知書(副)」を紛失している場合、再交付は受けられません。しかし、建築確認申請を行なった行政機関にはその記録が残っているので、役所の建築課の窓口で「確認台帳記載事項証明」を発行してもらえば「確認通知書(副)」の代用とすることができます。

確認台帳記載事項証明書:
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または、「建築計画概要書」の閲覧申請を依頼することでも、建築確認通知書が受理された月日が判断できます。
年代が古くなればなるほど、「建築計画概要書」が保存されていないことがありますので、窓口の方に相談してみてください。

発行してもらうためには、建物を特定するために次のような情報が必要です。

① 建築当時の地名地番 (現住所でも対応してくれます)
建築年(竣工年や大体の年でもOK)
③ 建築当時の建築主名
④ 構造種別、用途、階数、延べ面積、建築面積、敷地面積
(1つでも多くの情報があると探しやすくなります)

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3.地震発生時の新旧基準の被害差~旧耐震は新耐震の11倍大破した~

耐震基準の違いで被災度に明確な差異が発生しているか否か調査したデータを見ると、旧耐震基準の建物は新耐震基準の建物の11倍大破した数が多かったことが分かりました。

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(参照:平成7年度版「警察白書」
(参照:平成7年 阪神・淡路大震災 建築震災調査委員会中間報告

1995(平成7)年1月17日の阪神・淡路大地震では、6400人を超える命が失われましたが、その犠牲者の8割以上が、家屋の倒壊等による圧迫死が原因とされています(図1)。
そして、注目すべきは倒壊住宅の多くが「旧耐震」時期の建物だったことです(図2・図3)。

このことから、旧耐震基準と新耐震基準では地震発生時に安全面で大きな差が生まれることがお分かりいただけるのではないでしょうか。


4. 旧耐震基準の建物に発生しうる3つの費用

旧耐震基準は新耐震基準より利回りが高いため一見魅力的に見えますが、長い目でみると新耐震基準よりも様々な費用がかかってしまい、お得ではない場合もあります。

以下で詳しく説明します。

4.1.エレベーターリニューアル費用

旧耐震基準の建物に備わっているエレベーターは安全性が古く既存不適格となっている可能性が高いため、リニューアル工事が必要となる可能性があります。

リニューアル工事で新基準のエレベーターを備え付けるためには、1台あたり800万円ほどの費用がかかります。

4.2.耐震基準適合証明書取得費用

不動産投資をする際に欠かせないのが金融機関からの融資ですが、旧耐震基準の建物に融資を受けるために耐震基準適合証明書の取得が必要となる場合があります。

耐震基準適合証明書は専門家に依頼をしますが、一般的に証明書の取得には1通あたり約5万円の費用がかかります。
また、取得までに最低でも1か月はかかることや、専門家への依頼に一定の書類が必要となることから、時間と手間もかかります。

また、耐震基準を満たすために耐震補強工事を実施する必要が出てくる場合もあり、その時は更に工事費用がかさむこととなります。

4.3.保険の割り増し費用

物件を購入する際は地震や火災に備えて保険に加入しますが、その際の保険料も旧耐震基準の建物の場合は割高となります。(具体的な値段は物件や保険会社によって異なるため本記事では割愛します。)

新耐震基準の建物と同じ金額で保険に加入するためには、4.2.でお伝えした耐震基準適合証明書を提出したり、建物の改修を行って新耐震基準の建物と同等の耐震性が確保されていることを証明したりしなければなりません。


5.さいごに

いかがでしたか。
旧耐震基準の物件は利回りが高く一見お得に見えますが、安全性や、物件購入後に発生しうる費用等のリスクを考慮すると、投資対象としては新耐震基準をお選びいただくと安心です。

不動産投資は割安な物件を購入することがポイントなのではなく、いかにリスクを抑えて運用できるかがカギとなります。

本記事が、中古築古物件のご購入をご検討されている皆様のお役に立ちましたら幸いです。

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