不動産売却にかかる費用一覧と、ケース別の節約方法

不動産売却費用
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多くの方にとって、不動産の売却は人生で何度も経験することではありません。
他方で不動産の売却は、かかる費用も高額なため、

  • どんな費用が掛かるのか
  • 安くする手段はあるのか

きちんと把握して、準備してから行うべきものです。

特に売却時の費用として大きなものは仲介手数料です。例えば自分が住んでいたマンションを5000万円で売却する場合には、最大で170万円程度かかることがありますが、交渉や、売り先を選ぶことによっては大幅に仲介手数料を軽減したり、なくしたりすることも可能です。

他にも、譲渡税などは大きな金額になることもありますが、特例控除などを活用して大幅な軽減ができる可能性もありますので、制度をしっかりと理解しておきたいところです。

この記事では、不動産の売却にあたっての費用を皆様が把握し、事前に心とお金の準備をしてから臨めるように解説を行なっています。

後半では各状況に応じたモデルケースも提示してありますので、ぜひ参考にしてみてください。

※不動産の売却に関する概要はこちらの記事でご覧ください。


1.不動産売却で主にかかる費用と、安くする方法

不動産売却に要する費用の項目は、不動産の種類や取引の形態によっても異なりますが、多くのケースで以下のような項目の費用が掛かります。

主な費用一覧

1.1.仲介手数料

不動産を売却する際、自分で買主を見つけることは一般個人にとって容易ではありませんので、ほとんどのケースで不動産業者に仲介を頼むこととなります。

支払いの時期、条件

仲介手数料は成功報酬で、実際に売却が成立したときに支払うものです。商慣習としては買主と売買契約を結んだときに半額を、物件を引き渡したときに残りの半額を支払うのが一般的です。

売買が成立しなくても、次の2つの場合は仲介手数料を支払う必要があります。

  • 手付解除…売買契約後に、手付金を放棄(買主から)、もしくは返還した上で同額を支払い(売主から)して契約を解除できますが、その場合には仲介手数料を支払う必要があります。
  • 違約解除…売買代金を支払わないなど、契約違反(債務不履行)によって契約を解除された場合でも、仲介手数料を支払う必要があります。

支払う金額

仲介手数料の金額は、売却価格が400万円を超えるときには以下の計算式で算出します。

仲介手数料の計算法

400万円以下の場合も合わせて、金額の計算法は以下の通りです。

仲介手数料 一覧

安くする方法

仲介手数料を安くする方法は主に以下の2つです。

  • 業者と交渉する
  • 業者に直接買い取ってもらう

まず、「業者と交渉する」について解説します。
上記で紹介した「支払う金額」については、不動産業者が受け取れる上限の金額を示したものです。業者はこれ以上の報酬を受け取ってはいけないことになっています。

上限の金額という事は、報酬金額は上記で算出した金額以下でも構わないという事になります。実際に不動産業者との交渉で仲介手数料の料率を下げることも可能です。

ただ、売却にあたって不動産業者は重要なパートナーとなりますので、売却を成功させるためには報酬の低減は得策とは言えないでしょう。
報酬については上限で支払う代わりに、自分の物件の売却に注力してもらうようにコミュニケーションを取った方が、より高い値段での取引につながる可能性が高くなります。

次に「業者に直接買い取ってもらう」についてです。
不動産業者に仲介してもらうのではなく、直接買い取ってもらう場合には、仲介手数料はかかりません。
査定金額を比較し、仲介会社の査定価格と、買取業者の査定価格が同じ場合には、買取業者に売却したほうがお得となりますので、覚えておきましょう。

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1.2.印紙税

売買契約書には印紙を貼付する必要があります。売買契約書は売主分と買主分の計2通を作成することが通常ですので、売主と買主がそれぞれ1通ずつ印紙を負担することがほとんどです。

なお、仲介会社と締結する媒介契約書には印紙は必要ありません。

支払う金額

令和4年3月31日までに作成する土地建物売買契約書にかかる印紙税については軽減措置が実施されており、以下の表に従って支払います。

印紙税の軽減措置

安くする方法

主には以下のような方法があります。

  • 消費税別の金額を売買契約書に記載する税額区分が変わる場合は効果あり
  • 印紙を金券ショップで購入する額面より安く購入できる可能性あり
  • 契約書を1通にして、自身のものをコピーにするコピーには印紙を貼る必要がないが、裁判などではコピーのほうが効力が弱い場合があるので注意

1.3.登記費用

不動産の売買をする際は、登記費用も掛かります。

  • 売主側抵当権抹消登記(抵当権がついている場合)
  • 買主側所有権移転登記

といった形で費用負担するのが一般的です。

支払う金額

抵当権の抹消登記を自身で行う場合は、1不動産あたり1000円の登録免許税を支払う必要があります。
ただ、重要な手続きであるため司法書士へ依頼するのが一般的です。自分でつてがない場合は仲介会社へ紹介してもらうのも良いでしょう。報酬は司法書士にもよりますが、5000円から3万円程度が相場と言えます。

安くする方法

上記の通り自分で登記を行ったり、もしくは司法書士と報酬額を交渉したりすることで安くすることが可能です。
しかし、あまり大きな金額ではないため、手間を考えるとこの費用を軽減するのは得策ではないとも考えられます。

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1.4.ローン返済手数料

対象物件にローンが残っている場合は、売却時に残額を一括で返済することが必要です。
返済資金については、売却価格が残債(ローン残高)を上回っていれば、売買代金から返済ができますのでさほど問題はありません。しかし、一括返済には手数料がかかるのが一般的です。

支払う金額

手数料は金融機関や手続き方法(対面かオンラインかなど)、もしくはローン契約の種類によって異なります。1万円未満ですむ場合もあれば、返済金額の2%など、高額になる場合もあります。
高くなるケースとしては、長期の固定金利で引いていたローン契約を早期に解約する場合などが挙げられます。

安くする方法

金融機関と交渉することも不可能ではありませんが、交渉の余地は少ないと考えておいた方が無難でしょう。上述の通り、同じ金融機関でもオンラインで手続きすると安くなることがありますので、その辺りは金融機関に電話するなどをして確認しましょう。

1.5.譲渡所得税、住民税

不動産を売却すると、売却益に対して税金がかかります。売却後しばらく経ってからかかる費用なので、忘れずに準備しておきましょう。

支払う時期

所得税(復興特別所得税を含む)については売却があった翌年の確定申告期間中(原則2月16日~3月15日)に支払います。確定申告時に振替納税の手続きをすることも可能で、その場合は4月ごろに銀行口座から自動引き落としとなります。

住民税は、確定申告を経て、その年の5月以降に市町村から納付書が送られてきますので、一括払いか年4回の分割払いで納税します。

支払う金額

譲渡所得を計算し、出た数字に対して税率をかけて税額を計算します。譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得=不動産の売却価格-取得費用-譲渡費用
  • 取得費用購入代金又は建築費用、購入時の手数料、設備費、改良費などの合計。事業用の場合は減価償却費を差し引いたもの
  • 譲渡費用仲介手数料、印紙税、立退料など、売却にあたって支出した費用の合計。

譲渡所得が計算できたら、税率をかけて税額を計算します。税率は保有期間によって異なります。

譲渡税の税率

物件売却の年の1月1日において所有期間が5年間を超えていれば長期譲渡、5年以下であれば短期譲渡と判断します。物件売却日が基準になるわけではないので注意しましょう。
例えば、2020年1月30日に不動産を購入していた場合は、以下の図のような考え方となります。

長期譲渡短期譲渡の例

安くする方法

譲渡所得税、住民税を安くするために、「居住用財産の3000万円控除」を利用する方法があります。
以下の条件に当てはまれば、長期譲渡、短期譲渡を問わず譲渡所得から最大3000万円を控除できますので、譲渡所得税、住民税を支払わなくてよくなったり、支払額が大幅に減額されたりします。

3000万円控除の条件

本人の居住用のみが対象となりますが、自宅兼店舗となっている場合でも、自宅部分については適用が可能です。店舗(事業用)部分が10%未満の場合はすべてを自宅とみなしても問題ありません。
条件の詳細などは、以下のページで見ることができますので、参考にしてみてください。
参考:マイホームを売ったときの特例|国税庁

また、売却の結果、利益(譲渡所得)ではなく損失(譲渡損失)が発生した場合には、譲渡損失の損益通算及び繰越控除を利用することで、損失についてその年の給与や事業所得などの総合課税とみなされる所得金額から控除することができます。
更に、損失が大きすぎてその年の総合課税とみなされる所得金額から控除しきれない場合には、翌年以降3年までにわたって繰越で控除を利用することができます。

適用条件は以下の通りです。結果として所得税、住民税が安くなりますので、損失が出た場合には必ず確認しましょう。

譲渡損失の損益通算の条件

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2.ケース別、不動産売却にかかる費用

多くのケースで不動産売却にかかる費用は、第1章で解説したものとなります。
しかし、具体的なケースによっては、ここまでで解説したものの他にも特別な費用が掛かることがあります。
この章ではよくあるケースについて、追加でかかる費用を挙げていきます。

2.1.相続した不動産

物件を相続した場合に、主に考える必要のある費用として

  • 相続登記費用
  • 遺産分割協議書の作成費用
  • 相続税

があります。

遺産分割協議書の作成費用

相続人が複数いる場合などは、後のトラブルを避けるために遺産分割協議書を作成することが一般的です。基本的には司法書士や弁護士、行政書士等の専門家に作成してもらうこととなります。

依頼料は誰に頼むかによっても違ってきますが、相場は遺産総額の0.3%~1%程度です。

相続登記費用

簡単に言えば、法務局に対して「相続によりこの不動産は自分の物となりました」と登録するための費用です。

2021年1月現在では、相続登記は義務ではないのですが、登記されていない物件を売却するのは困難なので、売却を考えている物件については基本的には相続登記を行う必要があります。

相続登記費用を更に細かく分けると

  • 登録免許税固定資産評価額×0.4%
  • (依頼する場合)司法書士の手数料相場は1件あたり67万円

となります。

相続税

相続財産が一定額以上の場合には相続税もかかります。相続人の数にもよりますが、相続税評価額が3600万円以上の財産を相続する場合には、相続税を考慮する必要があるケースが出てきます。

この記事では、相続税の算出方法の解説は割愛しますが、気になる方は以下の記事をご参考ください。
参考:相続税の税率|国税庁

相続税の申告については、税理士に依頼することも多いと思いますが、申告する相続財産総額の0.5%~1%が相場と考えておくと良いでしょう。

2.2.海外不動産

海外の不動産を売却する場合、気にすべき点は税金です。日本で譲渡所得税、住民税がかかる他、海外でも税金が発生します。

国によって、売却益に税金を課すかどうか、税率、所有期間による税率の変化等それぞれに違いがありますので、購入あっせんをしてくれた不動産業者等専門家に確認を行いましょう。

また、海外と日本での二重課税を防ぐために、外国税額控除という制度もありますので、把握しておきましょう。
外国税額控除とは、現地で納めた税金を日本での確定申告時に還付してもらえる制度です。控除には以下の式で計算される上限があります。

所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の国外所得金額/その年分の所得総額)

また、上限に達してしまい控除できなかった部分は、更に最大3年間繰り越して、住民税から一部控除することが可能です。

2.3.境界が確定していない土地

我々の会社でも、年間100棟以上のアパート、マンションを買い取っていますが、隣地との境界が画定していないケースも多いです。

我々は境界非明示でも買取を行っていますが、境界が明示されていない物件だと、買い手が少なくなりますので、自分の手で境界を画定するのも、売却のための手段となります。

境界画定は土地家屋調査士に任せることとなります。業者と、土地の広さによって金額は異なりますが、我々が扱う事の多い300㎡規模の土地であれば約70万円の支払いとなることが多いです。

2.4.投資用不動産

賃貸事業を行なうために購入した建物については、減価償却をするのが、自己居住用の建物との大きな違いです。
1.5.で譲渡税について解説を行いましたが、記載の通り取得費用は減価償却費を差し引いて算出しますので、例えば1億円で買った投資用不動産を9500万円で売却したときなど、一見売却益が出ていないように見えるケースでも譲渡税を支払わなければならない事がありますので、注意しましょう。

減価償却についてよく分からない、という方は、こちらの記事をご覧いただければと思います。


3.さいごに

不動産売却では多大な費用が掛かるケースもありますので、手元資金によっては、費用を工面できないためにスムーズに売却が完了しないという事にもなりかねません。

不動産売却をお考えの場合は、本記事を参考にかかる資金を事前に概算していただき、計画的に資金を準備していただければと思います。

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