「郊外の高利回り物件に投資したい」と思って物件を探している中で、「市街化調整区域」にある物件を見つけたことはありませんか?
市街化調整区域の物件は価格の安さが魅力ですが、特に初心者の方が購入するのは要注意です。当社では年間約250棟の収益物件を売買していますが、一般の投資家様に対して、市街化調整区域の物件の購入は本当に厳選された物件以外では基本的におすすめしていません。例外的に市街化調整区域でも入居需要を見込めるなどのメリットがあれば売買するケースもありますが、上級者レベルでなければ、入居需要の見極めや購入すべきか否かの判断は非常に難しいです。
この記事では、市街化調整区域の概要や投資に適さない理由を解説します。
目次
1. 市街化調整区域とは
1.1. 市街化調整区域とは
市街化調整区域とは、都市計画法で指定されている「市街化を抑制すべき区域」です。市街化調整区域では、一般的な市街地に必要な住宅や商業施設の建築が原則として認められていません。これらを建築したり増築したりする際には、開発許可が必要になります。
イメージとしては、周囲を田んぼに囲まれているような「田舎」なエリアです。東京23区では市街化調整区域はほとんどなく(河川の周囲などは指定されている場合がある)、多摩地域の一部や近隣都道府県の郊外では、市街化調整区域に指定されているエリアもあります。
なぜ区域を指定して市街化を抑制するかというと、無秩序に市街地が拡大することで、住みにくい街になることを防ぐためです。市街地が広がりすぎると、学校や病院などの公的サービス施設や商業施設の立地が分散してしまい、結果的に生活の利便性が低くなってしまいます。そのような市街地が形成されるのを防ぐために、都道府県(国土交通大臣の場合もある)が市街化調整区域を指定しているのです。
では、市街化調整区域には住宅や商業施設が全く存在しないかというと、実はそうではありません。都市計画法が制定されて市街化調整区域として指定される以前から住宅などがあったエリアでは、一定の要件を満たせば、建物の新築や増改築が認められています。そのため、実際には住宅や賃貸物件が建築されたり、販売されたりすることもあります。
1.2. 市街化区域やその他の区域との違い
市街化調整区域と対をなすものとして、市街化区域があります。市街化区域とは、その名の通り「市街化を活性化する区域」であり、すでに市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を進めていく区域を指します。
市街化区域については、こちらの記事で詳しく解説しています。
参考までに、都市計画法で定められている土地の地域区分を図で示します。
日本の国土のうち、「一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域」として都市計画区域が定められています。しかし、前述の通り、無秩序に市街化を進めることで住みにくい市街地が形成されるのを防ぐため、その中でも優先的に市街化する区域(市街化区域)と抑制する区域(市街化調整区域)を指定しています。なお、実は都市計画区域内でも上記のどちらにも指定されていない「区域区分が定められていない都市計画区域」(通称:非線引き区域)も存在しています。
2. 市街化調整区域の物件購入をおすすめしない理由
市街化調整区域内の物件は、不動産投資には基本的におすすめできません。この章では、その理由を解説します。
2.1. 原則として建物を建てられない土地のため、資産価値が低い
市街化調整区域における最大のデメリットが、原則として建物を建築することができないという点です。都道府県の許可を得れば建築可能ですが、建築可能となる条件や建築時の制限があることから、土地としての価値は低くなっています。
資産価値が低いため、共同担保としても評価されにくくなります。不動産投資事業の拡大を目指す際、既に購入した物件を共同担保に設定して次の物件購入の融資を受けるという戦略もありますが、市街化調整区域の物件の場合は、そのような活躍は期待しづらいです。不動産投資での規模拡大も視野に入れている方には、市街化調整区域内の物件はおすすめしません。
2.2. 電気・ガス・水道などのインフラ整備が不十分
市街化調整区域は、市街化を抑制する地域です。そのため、電気・ガス・水道などのインフラ設備が不十分な可能性があります。
物件を賃貸するためには、そうしたインフラの整備が不可欠です。もし物件の周辺のインフラが整備されていない場合には、物件の購入価格以外にもそれらの整備費用が追加で必要となります。価格が安くて一見高利回りに思える物件であっても、そうした費用を込みで考えれば、大してお得ではない可能性もあるため注意が必要です。
2.3. 日常生活が不便なエリアのため、賃貸需要が低い
不動産投資で得られる収入には、インカムゲイン(賃料収入)とキャピタルゲイン(売買差益)があります。そして、インカムゲインを上げるためには、入居率を高めることと、家賃を高くすることが重要です。入居率と家賃を高くするためには、端的に言えば入居者からのニーズの高い物件でなければなりません。
しかし、市街化調整区域には、基本的に商業施設や公的設備がありません。駅やスーパー、コンビニ、学校、病院などといった日常生活に欠かせない施設が遠い可能性が高いため、生活には不便であり、賃貸需要は低い傾向にあります。
表面利回りが高い物件でも、入居者からのニーズが低く空室が多くなってしまえば、意味がありません。また、仮に稼働率は好調でもそもそもの家賃が低ければ、賃料収入は少額のため、大きな利益は見込めません。
不動産投資で安定したインカムゲインを得たい方、規模の大きな投資をしたい方には、市街化調整区域内の物件は向いていないでしょう。
2.4. 売却が難しく、売買差益も狙いにくい
市街化調整区域内の物件は、出口戦略にも注意が必要です。市街化調整区域の物件は一般的に、以下のような理由から売却しづらいことが多いです。
建築における制限や生活上の不便さから、マイホーム購入層の需要が小さい
前述の通り市街化調整区域は建物を自由に建築できなかったり、生活に不便だったりすることから、そこに住みたいという需要は小さいです。そのため、わざわざ市街化調整区域の土地を購入してマイホームを建てたいなどという人は、そう多くありません。
市街化調整区域の物件を売却する際には、そもそもの需要が小さいため、買い手探しに苦労しやすいですしょう。
不動産投資層に売る場合、収益性で価格が決まるため、安値での売却になりがち
市街化調整区域の物件の買い手として実需層(マイホーム購入層)が少なければ、売却先は投資家がメインとなります。投資物件として売買する際には、価格は収益性をもとに決まる(収益還元法)ことが多いため、相場以上に高く売れることはあまり期待できません。
資産価値が低いため、金融資産からの融資が出づらい
市街化調整区域の土地は資産価値が低いため、金融機関からの評価も伸びづらく、融資が出ないことが多いです。ローンを組めない物件の場合、現金で購入できる人に売却するしかありません。購入できる層はより少なくなるため、売却は難しくなります。
3. 《例外》市街化調整区域の物件への投資を検討してもよい場合
前章では、市街化調整区域の物件を投資用に購入するのはおすすめしない理由を説明しました。市街化調整区域の物件への投資は難易度が高いため、特に不動産投資初心者の方であれば、手を出すべきではないでしょう。しかし、不動産投資のノウハウをある程度持っている方や、少額の自己資金で取り組みたいという方なら、例外として以下のようなケースでは投資対象として検討してもよいかもしれません。
3.1. 割安で購入でき、賃料収入も期待できる場合
市街化調整区域の物件は資産価値が低いため、価格が安くなりがちです。購入価格にインフラ整備や修繕費用等の諸費用を加味しても期待できる利回りが相当に高ければ、魅力的な投資対象といえるでしょう。もちろん、購入諸費用だけでなく、「実際に賃料収入を稼げるか?」という賃貸需要の点についての確認は必要です。例えば、市街化調整区域内でも市街地区域と隣接しているエリアや、市街化調整区域の線引きがされる以前から住宅地が形成されていたエリアなどは、一定の賃貸需要が見込めることもあるでしょう。
3.2. 少額で不動産投資に取り組みたい場合
市街化区域で一棟物件や区分所有物件を購入できるような資金が無い方や、まずは少額で不動産投資に取り組みたいという方には、市街化調整区域の格安物件に投資するという選択もアリでしょう。例えば、市街化調整区域の戸建てを数百万円で買うような投資であれば、損失の金額的なリスクはかなり小さく抑えられるでしょう。
3.3. 売却を見据えず、長期的に保有することを想定する場合
市街化調整区域の物件に投資する最大のリスクが出口戦略の取りづらさです。しかし、そもそも売却するつもりがなく長期で保有するのであれば、出口戦略を考える必要はありません。特に市街化調整区域の物件では、格安で購入できるためかなり高利回りが期待できるケースもあります。そのような物件であれば、インカムゲインを稼いで投資回収するという戦略も有効でしょう。
4. さいごに
不動産投資で市街化調整区域の物件に投資すべきでない理由を解説しました。市街化調整区域は、インカムゲイン・キャピタルゲインともに狙うのが非常に難しいです。かなりの高利回りが期待できる場合や、少額で投資をしたい場合などの例外的なケースもありますが、市街化調整区域の物件への投資は基本的に難易度が高いため、特に不動産投資初心者は避けた方が無難です。
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