マイホームの購入を検討する中で、物件の情報に「都市計画」や「市街化区域」などといった表記を見たことはありませんか?
市街化区域は、すでに市街地として栄えている地域や今後市街化が進められる地域のことです。
厳密には、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義されています。
間取りや駅徒歩時間などに加えて、こうした都市計画に関する情報もマイホームを含めた物件選びにおいて重要になります。
この記事では、市街化区域の意味、市街化調整区域との違いや市街化区域かどうかの調べ方について説明しますので、ぜひ物件選びに役立ててください。
目次
1.市街化区域とは
1.1.市街化区域は、現在もしくは将来の「市街地」のこと
市街化区域とは、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」のことです。
すでに市街地として栄えている場所や、公共施設の整備などで今後市街化が進められる場所のことを指します。
私たちが「街」と聞いてイメージするような地域は、基本的に市街化区域に該当すると考えて問題ありません。
以下の写真のような地域が市街化区域です。
市街化区域には用途地域というものが定められて、住居用の地域、商業用の地域、工業用の地域などに分かれています。
〇住居系の地域
〇商業系の地域
〇工業系の地域
もしマイホームを探しているときにもし物件資料に市街化区域との記載があれば、その物件周辺は市街地化が進むと考えてよいでしょう。基本的にはその物件の都市計画については心配しなくてかまいません。
ただし、その土地が工業専用地域(用途地域の1つ)にある場合は、住宅を建築できませんので注意が必要です。
1.2.市街化調整区域との違い
市街化区域と対になるものとして、市街化調整区域があります。簡単に言えば、私たちが「田舎」と聞いてイメージするような地域です。
市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」、つまり開発行為や施設の整備を極力行わない地域です。
市街化調整地域では住宅の建築に制限がかかります。マイホームの候補がこの地域にある場合は注意しましょう。
2.市街化区域の特徴
市街化区域には、他の区域にはない特徴があります。
2.1. 用途地域が定められている
市街化区域には原則として用途地域が定められています。
家の隣に工場があり、その隣には病院があって…というように異なる種類の土地利用が混ざってしまうと、生活環境や利便性が下がってしまいます。
そこで、区域ごとにその用途をある程度制限することで、環境や利便性をはかるのが用途地域です。
用途地域には大きく分けて住居系・商業系・工業系の3つのジャンルがあり、全部で13種類存在します。
用途地域によって、そのエリアで建築できる建物の種類や高さなどが制限されます。
引用元:国交省HP「みんなで進めるまちづくりの話–国土交通省」(https://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/03_mati/04/)
2.2.住宅を建てられる
市街化区域は、基本的にどこでも住宅を建てることができます(工業専用地域を除く)。
一方で、市街化調整区域では住宅の建築や建て替えは制限を受けます。
マイホームのための土地や建物を購入する際には、市街化区域の物件を選んだ方が無難と言えます。
2.3.生活の利便性が高い
市街化区域は、すでに市街地が形成されている地域あるいは今後市街化を進める地域です。
そのため、電気・ガス・水道や道路・公共交通機関、病院・学校・役所などの社会インフラが整備されているか、今後整備される可能性が高いエリアです。
つまり、「住みやすい」地域であると言えます。
2.4.不動産を売却しやすい
市街化区域は住宅を建てやすいため、不動産を売却しやすい地域です。
利便性も高い地域のため住みたいと思う人が多く、高値での売却も狙いやすいです。
ただしその分、市街化区域の土地や建物を購入する際は価格が高くなりがちです。
これに対して市街化調整区域の場合は、住宅の建築や建て替えが難しいため土地や建物を売却しにくく、価格は低い傾向にあります。
2.5.都市計画税がかかる
市街化区域内の土地、建物を所有する方には都市計画税が毎年課税されます。
都市計画税は固定資産税と合わせて課税されます。
税額は「課税標準額(固定資産税評価額)×0.3%」ですが、住宅用地の場合には軽減措置があります。
3.市街化区域の調べ方
ここでは、実際にある物件がどの区域にあるのか調べる方法をご紹介します。
すでに物件に目途がついていて物件資料がある場合は3.1.「物件資料から調べる場合」を、まだ物件は決まっておらずエリアだけ決まっている場合は3.2.「特定のエリアから調べる場合(行政の情報を調べる方法)」を参考にしてください。
3.1.物件資料から調べる場合
すでに物件に目途がついている場合、手に入れた物件資料に都市計画の記載があります。ウェブ上に掲載されている物件の場合、ページ下部記載の物件詳細情報欄に書かれていることが多いようです。
〇SUUMO
〇アットホーム
〇LIFULL
3.2.特定のエリアから調べる場合(行政の情報を調べる方法)
物件の目途はついていないがおおよそのエリアは決まっている場合、行政が公表している都市計画図を利用することで市街化区域かどうか、判定できます。
具体的には、調べたい市区町村の名前を使ってウェブで「都市計画図 ○○市」と検索して調べることができます。
GISまたはPDF形式などで都市計画について確認することができます。前者の場合、住所で検索したり拡大・縮小ができたりと柔軟な検索が可能です。
〇GISで閲覧する場合(東京都荒川区)
https://www2.wagmap.jp/arakawa/Portal
〇PDFなどで閲覧する場合(岐阜県可児市)
https://www.city.kani.lg.jp/2856.htm
このほか、紙で確認したい場合、確実に確認したい場合は市区町村役所に出向き、「都市計画課」などの担当部署に依頼すれば確認することができます。
4.(不動産投資向け)市街化区域の物件は買うべきか?
居住用の物件のみならず、アパートなどの投資用物件にも市街化区域等の指定が存在します。
自分の検討している物件が市街化区域であることによって生じるデメリットはほとんどありません。
基本的には人が住みやすい地域ですので、賃貸する上で入居希望者を見つけやすいと言えます。
そのため、自身の検討している物件が市街化区域だからといって、何かを気にする必要はないといっていいでしょう。
むしろ、初心者なら市街化区域の物件を選んだ方が無難であり、市街化調整区域の場合は要注意です。
なお、居住用の物件同様、物件資料に都市計画についての記載があります。
不動産投資における市街化調整区域の物件については、以下の記事で詳しく解説しています。
5.(宅建受験者向け)市街化区域における特則
宅建(宅地建物取引士試験)を受験される方にとって、市街化区域は重要な論点です。この章では、市街化区域内での特則について簡単にご紹介します。
5.1.開発許可
市街化区域において1000㎡以上の開発行為を行う際には、原則として都道府県知事の許可が必要となります。農林漁業用建築物についても、1000㎡以上であれば許可が必要です。
ただし、「図書館、公民館、仮設建築物、鉄道施設、変電所等を建てるための開発行為」「非常災害の応急措置、都市計画事業、土地区画整理事業等のための開発行為」については許可が不要になります。
5.2.国土利用計画法にもとづく届け出
市街化区域内の2000㎡以上の土地取引については、国土利用計画法に基づく届け出が必要となります。土地の取得者が、契約後2週間以内に市町村長経由で都道府県知事に届け出ます。
5.3.農地法における特則
通常、農地を転用したり、転用目的で売ったりする(転用目的権利移動)場合は知事などの許可が必要です。しかし、市街化区域内の農地については農業委員会に届け出ることで許可は不要となります。
6.おわりに
マイホーム探しにおいて、都市計画の情報は間取りや駅距離とならんで重要になってきます。特に、市街化調整区域にある物件の場合は注意が必要になります。
この記事の情報をもとに自分が探している物件がどのような都市計画の地域にあるのか調べてみてください。
コメント