「資本的支出」と「修繕費」とはどこがどう違うのかおわかりでしょうか?
築年数の古い物件であればあるほど修繕や改修工事が欠かせなくなるため、この2つの違いについてしっかりと認識していることが求められます。
今回は資本的支出と修繕費の区分と、確定申告で費用計上する際に気を付けるべきポイントについて説明します。
資本的支出と修繕費はどのような判断で区別すべき?
収益物件を経営する上で必要になる資本的支出とは、その収益物件の資産価値を上げるための工事費用のことを指します。
これに対し、修繕費とは原状に復するための工事費用のことです。
つまり、壊れたところをもとに戻すための費用です。
資本的支出と修繕費の費用計上の違い
なぜ資本的支出と修繕費を分けなければならないのかと言うと、不動産所得に関する確定申告で必要経費として計上する際、この2つを区分する必要があるためです。
資本的支出は、費用計上する際には減価償却資産となります。
減価償却の期間は、国税庁が定めている物品ごとの耐用年数に従って、対象とするものの耐用年数と同じに設定します。
これに対し、修繕費は一括費用として計上できます。
資本的支出と修繕費それぞれの具体例
資本的支出の具体例には、以下のような工事があげられます。
- モルタル塗装をタイル張りへと変更する
- 壁紙をよりグレードの高いものに張り替える
- ガス給湯器を旧型のものから追い焚き付きオートバスなど新しいタイプに変える
一方、修繕費の具体例としては、以下のような工事が該当します。
- 塗装グレードの変わらない定期的な外壁塗装
- 退去時に以前と同グレードの壁紙へと張り替える
- ガス給湯器の入れ替え
中でもよく問題とされるのが大きな金額のかかる塗装工事です。
この場合も、原状回復の範囲内の塗装工事であれば、修繕費として計上することが可能です。
具体的には、フッ素、光触媒など特別上質な材料を用いた塗装工事でなければ、「原状回復の範囲内の修繕費」であることが認められると考えて良いでしょう。
修繕費を一括計上する際の注意点
ただし、年収や不動産収入が高額になる方は、あえて一括で経費計上しない方が税制面で有利になる場合もあります。
また、資本的支出か修繕費かが分からない場合、「物件取得価額のおおむね10%以内なら修繕費」という目安もあります。
このことも頭に入れておきましょう。
いずれにしても、資本的支出と修繕費の区分は個別の判断となります。
最も確実なのは不動産について専門知識を持つ税理士に相談することです。
収益物件についてあまり知識がない税理士の場合は、保守的なアドバイスしかできない可能性があるので要注意です。
利益を最大化するには、どのような工事と経理処理をすべきなのかを判断できる税理士を選んでください。
資本的支出と修繕費はその違いをしっかりと認識する必要があります。
どのようにお金をかければ損をすることなく利益を最大化できるのか、専門家の知識も借りながら正しい対応をしましょう。