入居者の退去時、トラブルの種になりやすいのが「退去負担金」です。原状回復費用のうち、どのようなケースであれば入居者がこの退去負担金を支払うのかを事前に明確にしておかないと、費用のほとんどをオーナーが負担することになります。退去負担金を巡るトラブルを回避するためのポイントについて解説します。
退去負担金とは
退去負担金とは、入居者が退去するときに発生する原状回復費用のうち、入居者が負担する費用のことです。
住宅の賃貸借契約において多いトラブルは、退去時の敷金の返還と原状回復義務(入居者が支払う退去負担金)に関するものです。
この問題については、退去時の原状回復費用の負担にかかわるトラブルを防止する目的で定められた東京ルールと呼ばれる条例や、国土交通省のガイドラインが定められ、入居者である借主の負担すべき範囲が明確に規定されています。今では敷金の多くが入居者に返還され、原状回復費用の多くはオーナーが負担することになっています。
しかし、次に問題になっているのが、賃貸借契約書に特約として明記されたクリーニング代などの費用です。これも更新料などと同じように、長期間にわたって裁判が行われてきましたが、最高裁で「賃貸借契約書に記載してある範囲については入居者が負担しなければならない」といった判決が出ています。
退去負担金を入居者から回収する必要性
収益物件を経営するにあたっては、この退去負担金についてしっかりと把握し、必要な費用に関しては入居者から回収しなければなりません。というのも、入居者の住み方によっては原状回復費用だけで100万円以上かかるような場合があるためです。
しかし一方で、退去負担金を回収できないケースは増えています。退去負担金を支払う、支払わないというトラブルが発生し、それが「賃貸借契約書に明記してある範囲」でないと判断されると、入居者はお金を支払う必要がなくなり、オーナーにとっては取りっぱぐれが起きてしまいます。こうした事態はできるだけ回避しなければなりません。
退去負担金を巡るトラブルを回避するには
上述したように、賃貸借契約書に退去負担金について記載されていれば、入居者が退去負担金を負担すべきということが認められます。
具体的には退去時のクリーニング代、畳の表替え代、さらにタバコによる焼け焦げやペットによる傷といった故意、過失により通常の使用を超えるような損傷などがあった場合の修繕費用などについて、細かく賃貸借契約書に記載しておく必要があります。これらを契約書に明記することで、退去負担金を巡るトラブルのほとんどは回避できます。
ただし、東京ルールや国土交通省のガイドラインの内容を超えて定めた事項については、訴えられたときにオーナー側が敗訴する可能性が高くなります。何でも特約にすれば有効というわけではないので注意してください。
退去負担金を確実に回収するためのポイント
最後に、退去負担金を確実に回収するには、「金額の確定」と「回収」という2つのポイントに分けて考える必要があります。
金額の確定とは入居者が退去の際に原状回復費用のうちいくらを負担するかということです。金額の確定にはさらに2つのステップが必要です。
1つ目は賃貸借契約書にきちんと負担区分を明記することです。記載がなければ負担区分が曖昧になり、現在の入居者保護の観点から、ほとんどの場合オーナー側が負担せざるを得なくなってしまうのです。
2つ目は退去立会いを確実に行うことです。退去立会いは退去時に入居者と共に部屋の中を確認し、どの部分が入居者の過失であるかをその場でチェックし、双方合意のもとでサインをしてもらう作業です。
次に回収に関してですが、こちらは保証会社を利用する方法が確実です。
たとえば新規の入居者に関して、保証会社と賃料の3カ月分までを上限とした退去負担金を保証の範囲とした契約を結びます。上限を超えた分は自ら回収することになりますが、大半はこの程度の範囲内で収まるでしょう。保証会社を利用すると、代わりに「敷金なし」で入居者を募集できます。このことも大きなメリットです。
退去負担金についてオーナーがしっかりと把握し、対応しなければならないことをお分かりいただけたでしょうか。トラブルを避けるために、まずは賃貸借契約書の見直しから始めることをおすすめします。
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