収益物件の価格の建物部分は、減価償却費として計上できることはご存知のとおりです。その建物は、さらに躯体部分と設備部分に分けることで、減価償却期間を短くすることができます。その方法と、両者の比率について説明していきましょう。
躯体部分と設備を分けて償却するメリット
節税効果という観点で見ると、収益物件の減価償却は金額が大きく、償却期間は短いほど良いことになります。
このうち、減価償却期間を短くすることができるテクニックの1つが、建物の躯体部分と設備を分けて償却するというものです。
躯体部分とは建物本体のこと、設備とは給湯器やエレベーターなどの付属設備のことです。躯体部分と分けて償却すると、設備部分の償却期間は最短3年にまで短くなります。その節税効果は、特にRC造(鉄筋コンクリート造)の物件のように、躯体部分の耐用年数が長い物件の場合に有効です。
RCの物件では、躯体部分の法定耐用年数は47年となっています。そのため償却期間も47年となり、これに対して設備の償却期間は15年です。仮に築20年の物件であれば、設備部分は3年間で償却できる計算になります。
すると設備部分を償却する当初の3年間は、躯体部分と設備部分を分けない場合に比べて格段に大きな償却金額を計上でき、その分、節税効果も大きくなります。
比率はどのくらいが適切?
では、躯体部分と設備部分を分ける場合、その比率はどれくらいが適切なのでしょうか?
設備部分は建物の総額の1~2割に設定するのが一般的です。仮に建物価格が1億円であれば、設備価格は1,000万~2,000万円となります。設備費をこれ以上の金額に設定するのは、何かよほど特殊な事情がない限りは不自然です。
躯体部分と設備を分けて償却する際の注意点
設備に関しては、以前は定率法で計上することも認められていましたが、平成28年の法改正により、現在は定額法しか認められていません。定率法のほうが節税効果は大きかったのですが、現在の定額法でも当初の3年で償却できるメリットは十分なものと言えます。
また、躯体部分と設備の金額は、物件を購入する際に、売主と買主の合意に基づいて売買契約書に明記しておく必要があります。これは土地と建物の価格を契約時に設定しなければならないのと同様です。
土地・建物の価格は契約時以外には設定することができません。設備の金額もこれに準じます。なぜ売買契約書に金額が明記されている必要があるかと言えば、万が一、税務調査を受けたときに、それが各価格(土地価格、建物価格、躯体部分価格、設備価格)の根拠となるためです。 もしも不動産会社の方針などで売買契約書に価格の記載ができないというときは、売主と「覚書」を交わすなどして、各価格を明記し、証拠を残すようにしましょう。
躯体部分と設備部分を分けて減価償却するのは、収益物件運用における節税効果を高めるためにぜひ知っておきたい方法です。不動産投資を行うときはそのことを覚えておきましょう。