不動産投資というとインカムゲインを得ながら運用し、価値が最大化したときに売却してキャピタルゲインをも得る、という面ばかりがクローズアップされがちです。 しかし一方では、収益物件を長期保有して、継続的に安定した収入を得るスタイルの運用方法も存在します。 今回は不動産投資で所有物件を長期保有する場合の、運用ポイントについて説明します。
長期保有を検討すべき物件とは?
収益物件活用の運営モデルとしてよく知られているのは、インカムゲインを得ながら節税効果を活用しつつ、できるだけ短期間に減価償却をして、最後は出口戦略(売却)によってキャピタルゲインである売却益も得る、というものです。
実際にファンドや転売を目的に短期の資金調達を行う不動産会社の投資では、物件を売却することは当初より既定路線とされています。
例えば複数の投資家からお金を預かって収益物件を取得・運用し、インカムゲインを投資家に配当して一定期間内に元金を償還(利益確定)するファンドの場合、最終的に物件を売却しなければ元金を償還することはできません。つまり、ファイナンス面からも出口戦略が必須ということです。
しかし、金融機関から20~30年の長期で融資を受けてアパート経営を行っている個人などの場合は別です。 急いでローンを返さなくてはならない理由はなく、賃料収入が安定しているのであれば出口戦略も必要ありません。 そのため長期間にわたって収益物件を保有することで毎月の安定収入を持続させることができます。これはいわば細く長く収益を得ていくという戦略です。
長期保有のメリット
収益物件を長期保有するメリットは、何よりも安定収入という収益物件における最大の恩恵を持続的に得られるということです。
また、最初から出口戦略を組み入れて収益物件を運用する場合と違って、いつまでに売らなければならないという制約も受けません。キャッシュフローが回っている限りは、保有したままインカムゲインを得ていくという気楽さがあります。
しかも、何らかの売らなければならない理由が発生した場合や、利益を最大化できる機会が訪れた場合は、売却を選択することもできます。
市況が変わって保有している物件が高く売れるチャンスが訪れれば、売却して利益を得られます。 あるいは他に所有している収益物件の修繕費用がかさむなど業績が落ち込んだタイミングで売却益を得て、損失を取り戻すことも可能です。
長期保有していく中での運用のポイント
もう1つ覚えておきたいのは、長期保有していて減価償却が終わった場合は、そのタイミングで追加物件を取得すれば、さらに数年間、課税を先送りできることです。
例えば法定耐用年数を過ぎた築22年超の木造物件を取得すれば、償却期間は4年です。この物件を取得して4年が経過し、減価償却期間が終わったら、そのタイミングで同じように短期で償却できる別の木造物件を取得します。
この場合、1棟目の物件が利益を生んでいる状態となります。そのため追加取得分の費用はその利益と相殺され、赤字幅は1棟目ほど大きくはなりません。しかし利益を出さない、もしくはできる限り抑えることは可能です。
例えば減価償却が終わる5年目以降のタイミングで同じ規模の物件を取得すれば、利益は大幅圧縮されます。これが、追加取得による利益の先送りです。
その先も、2棟目の物件の減価償却が終わるタイミングで3棟目を取得……というように物件を追加取得し、利益を先送りしていけば、継続的に家賃収入=キャッシュフローが拡大していきます。
一方、残債は時間の経過とともに減っていき、ある時点で完済します。このように長期保有しながら物件を追加取得していけば、キャッシュフローだけで生活ができるような段階へと達することになります。これは安定した生活基盤を得るためにきわめて合理的な方法と言えます。
変動が少なく、安定した賃料収入が得られる物件はもともと長期保有に向いています。その利点を活かした長期保有と追加物件取得による賃料収入を増やしていく方法は、堅実であると同時に戦略的な不動産の活用方法と言えるでしょう。