アメリカなどでは「ノンリコースローン」がポピュラーなローン形態として利用されています。
不動産投資で利用するノンリコースローンとはどのようなローンなのでしょうか。
ノンリコースローンの概要と、日本で主流のリコースローンの審査ポイントについて解説します。
ノンリコースローンとは
ノンリコースローンとは、不動産の収益力と資産の処分代金のみを担保として融資するローンのことです。
ノンリコースローンでは返済は担保の範囲内に限定され、担保割れとなった場合も、対象となる不動産以外からは債権の回収はされません。
言い換えれば、お金を借りて万一、ローンが支払えなくなっても担保である不動産を引き渡せばそれで債務はなくなるということです。
借りる側にとってメリットの大きいローンのため、多くの場合、金利は通常の融資より高く設定されます。
なお、「リコース(recourse)」とは「遡及」という意味です。
担保だけでは不足する差額を債務者に請求することを遡及と言い、ノンリコースとはこの遡及をしないという意味です。
一方リコースローンでは、担保の価値が残債を下回った場合には、差額は債務者の借金として返していく必要があります。
ノンリコースローンが日本ではあまり主流ではない理由
ノンリコースローンはアメリカなどで一般的なローン形態です。
しかし、日本ではリコースローンが主流であり、ノンリコースローンで融資が組まれるケースはまれです。
その理由は、日本ではお金は物件に対して貸すというより、個人の属性に対して貸すというスタンスが基本になっているためです。
そのため日本の金融機関は、個人に返済能力があるかどうかを最重要視します。
金融機関によっても異なりますが、日本では融資における審査割合の5~8割を占めるのが個人の属性に対する評価です。
一方、物件そのものに対する審査割合は2割から最大でも5割にとどまります。このことは、金融機関がいかにキャッシュフローに重きを置いて融資しているかを示すものとも言えるでしょう。
個人の属性はどのように評価される?
では、日本の一般的な融資であるリコースローンでは、個人の属性はどのように評価されるのでしょうか。
個人の属性の判断基準には定量面と定性面の二つがあります。定量面とは数字に表せる指標、定性面とは数字に表せない評価です。
定量面では、会社の経営状態を診断するのと同じように、その方のB/S(賃借対照表)とP/L(損益計算書)を作成し、資産超過であるか、毎月のキャッシュフローがプラスであるかを見ます。
この2点は必須条件です。金融機関はB/SとP/Lによって属性を格付けし、それによりいくらまで貸すか、基準を用意しています。
例えるならコップの大きさが決められるということです。属性が良い人は大きなコップ、属性が悪い人は小さなコップと判断されます。
定性面では、その方のこれまでの不動産投資の経験、保有している資格、人柄、返済実績といったものが評価されます。
また物件に関しては、立地や将来性、以前の保有者の履歴などが見られます。
近年では、金融機関による融資は定性面より定量面が重視される流れになっています。
これは審査作業の効率化を進めるため、情報処理システムによる自動化が導入されていることと関係があります。
自動化には定量面、つまり数値化されたデータを扱うほうがなじみます。大きな金融機関ほど定量面重視の傾向は強くなっています。
日本では不動産投資に対する融資はノンリコースローンより、リコースローンが主流です。
両者の違いと、リコースローンにおける個人の属性の評価基準について理解しておきましょう。