出生率の低下、少子高齢化…これからは日本の人口がどんどん減少し、自分の周りから人々が減っていく、というイメージをほとんどの人たちがお持ちだと思います。
不動産投資は活況を呈していますが、人口減少が始まっている日本において収益物件による不動産投資は有効なのか?という疑問を持たれるのは当然のことです。 果たして人口推移の観点から見て、現在の日本で不動産投資をすることは本当に賢くない選択なのか、検証していきます。
本当に日本の人口は減っているのか
まずは日本の人口がこれから本当に減少に向かうのかを見ていきます。 人口推移の予測は出生・死亡・移動という3つの要因の総合効果で決まります。人口は他の数値に比べ予測の精度が圧倒的に高く、ある程度正確に未来のイメージを描くことが可能です。
平成27(2015)年国勢調査によると、日本の人口は2015年時点で既に減少傾向にあり、2015年に1億2,806万人であったものが2060年には8,674万人まで減少すると予測されています。データを改めて見ても、人口が減少していくのは事実のようです。
「日本はどこも均質に人口が減っていく」という勘違い
それでは、やはり不動産投資には未来がないのでしょうか。結論から言うと、人口減少しない地域には不動産投資の可能性が残っていると言えます。
不動産投資否定派の方は、世界の人口が増えているにも関わらず、日本の人口が減っているので「不動産投資には未来がない」と結論付けてしまっていることを認識しなければなりません。 重要なのは、世界の人口推移と日本の人口推移は連動していないということです。同様に、日本の中でも、全体と同様の傾向を示さない地域が出てきます。
人口が減少しない地域、人口減の影響が小さな地域の物件を買うことが重要となってきます。例を見ていきましょう。
人口が減少しない地域 ex.東京都
人口が減少しない地域の代表として挙げられるのは、東京都のような大都市です。東京都政策企画局の推計によれば、東京都全体の人口がピークを迎えるのは2025年となり、その後10年程度は緩やかに減少します。
同じ東京都でも多摩・島しょを除く地域では人口のピークは更に後ろ倒しとなり、2030年ごろになる見込みです。
不動産投資のセオリーとしては15年も20年も同じ物件を保有するのはそれほど一般的な戦略ではありません。出口戦略(売却して利益を確定すること)まで考えると、人口減少が始まるまでにはまだ十分な期間があります。また減少が始まったとしても他の地域と比べて減少率が緩やかなため、こうした地域では「人口が減っていく」という不安とはほぼ無縁で収益物件による投資を行うことができます。
人口が減少しにくい地域 ex.さいたま市
日本有数の大都市でないとしても、もっと視点をミクロに移せば、人口が減りづらい地域を探すことは可能です。
例えば埼玉県。2015年に人口726万人をピークに減少に転じる見込みです。減少するとは言っても埼玉県の推計によると県の人口は2020年に725万人、2025年に718万人と、1%程度の変動であり比較的緩やかです。
緩やかとはいえ人口が減っているのは事実ですが、しかしだからと言って「埼玉県で不動産投資はナンセンス」とすぐに決めてしまってよいかどうか。答えはノーです。勘の良い方であればお分かりでしょうが、埼玉県の人口も、全ての地域で均質に減っていくわけではないことを理解しなければなりません。
埼玉県は「市町村別将来人口推計ツール」を公式サイトに設けており、見たい市町村の人口推移予測データを参照することが可能です。こちらのツールによると2015年時に126万人余りであったさいたま市の人口は2020年には129万人、2025年には130万人と微増で推移し、ピークを迎えるのは2030年ごろの予想です。
このように県単位で見ると人口が減少する地域でも、市単位でみれば減少しないという現象は多く見られます。区や町レベルまで視点を小さく持つと、同じような地域を無数に見つけることができるはずです。
逆に言うと、ミクロレベルで人口減少している地域には注意が必要です。更に、そういった地域には一般的には土地が余っていることが多いので、新築がどんどん建てられているケースが多いことも考慮する必要が出てきます。
大事なのは人口推移のデータだけではない
日本全体の人口が減少する中においても、減少しない地域もあるということをお伝えしてきました。物件選定をする際も、ある程度ミクロなレベルで人口推移がどうなっているかを検討することは大切です。
しかし、人口推移はその地域での入居付けのしやすさを見る一つの指標でしかありません。人口が増えるのであればどのような物件も満室にできるわけではありませんし、人口減少する地域では絶対に収益物件の投資が成り立たないということでもないのです。
あくまでニーズの高い立地、人気の間取りなど入居者様に選ばれやすい物件の選定やリノベーションの方がもっと大きな要因となることが多いですし、そもそも達成したい目標によっても、選ぶべき物件は異なってきます。短絡的に「人口減少の時代では不動産投資はムリ」と悲観的にならずに、注意深く適切な収益物件を探し続けることが、投資成功のカギとなります。
物件選びの鍵となる不動産投資の目標設定について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。