不動産の売買契約書に記載すべき内容にはさまざまなものがあります。中でも収益物件を取得する際には、特に気をつけなくてはならない事項があります。
本稿では、売買契約書とその記載内容の重要性についてご紹介します。
売買契約書の重要性
不動産の売買は高額資産を対象とした大きな取引です。そのため通常、不動産を売買する際には口頭での合意だけでなく、「売買契約書」を作成して取り交わします。
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者は、不動産の売買に関する契約を締結したら、遅滞なく契約内容を記載した書面を交付することを義務づけています。
売買契約書が重要なのは、書類の作成、調印によって売買の事実が証拠として残るからです。
しかし、収益物件の買主にとっては、他にも売買契約書が重要である理由があります。
土地、建物の価格は契約時以外には設定できません。そのため売買契約書に土地、建物の価格について明記すれば、売買の事実だけでなく、物件の価格とその内訳について売主と買主の両者で合意したことを証明できます。
土地、建物の価格がなぜ重要かと言えば、税務調査を受けた場合に、売買契約書が土地、建物の価格の根拠となるからです。
売買契約時に記載するべき事項
実は不動産の売買契約書の記載内容は、標準的な書式はあるものの、原則的に自由に決めることができます。
そのため売買契約書には、買主にとって必要な事項をしっかりと記載しておかなければなりません。
まず注意したいのは、契約書には取引の総額だけではなく、土地と建物それぞれの金額をきちんと明記することです。
契約書に金額が記載されていれば、税務調査においてもその金額が建物価格を示す裏付けとなります。
また、建物本体と設備の金額が分けられる場合は、これも明記することが大切です。
というのも、建物本体と設備では耐用年数が異なり、設備を分けることで初期の減価償却金額が大きくなるため節税効果を得られるからです。
たとえばRCの物件においては、建物本体は47年の償却、設備は15年の償却です。
築20年の物件であれば設備部分は3年間で償却できるので、大きな節税効果が得られます。
付け加えると、金額の他にも、代金の支払い時期、手付金と手付解除、所有権の移転、引き渡し、登記の時期、危険負担などについての明記が必要です。
危険負担とはたとえば引渡しの前に自然災害で建物が倒壊したなどによって売主の引渡義務が履行できなくなった際に、買主と売主のどちらが損害を負うかを定めるものです。
売買契約書に土地・建物の価格が記載できない場合
最も重要なのは売買契約書に土地、建物の価格を明記することです。
ところが、不動産会社の方針などによっては、売買契約書にそれらの価格が記載できないケースがあります。
そういった際は、「覚書」を交わしましょう。覚書には必ず双方が同意した土地と建物それぞれの金額を明記します。
売買契約書に土地、建物の価格を記載できないときには、代わりの証拠書類を忘れずに作成してください。
収益物件を取得する際、売買契約書の作成とその記載内容が重要である理由がお分かりいただけたでしょうか。
売買契約書の作成にあたっては必要なことが記載されているか、内容に漏れがないか、
しっかりとチェックすることが大切です。