収益物件を活用するとき、節税効果を高めるためのポイントとして挙げられるのが、減価償却期間を短くすることです。償却期間を短縮することは、なぜ節税につながるのでしょうか。その理由と、償却期間短縮のための方法について説明します。
減価償却期間を短縮するメリット
減価償却は金額を「大きく」、期間を「短く」するほど節税に効果的です。
金額が大きいほど節税効果が高いのは分かりやすいでしょう。減価償却費は建物や設備について、法定耐用年数として定められている期間、確定申告で経費として計上するものです。
この期間中は、実際には建物や設備のために現金を支出していないにもかかわらず、家賃収入から減価償却費を含む経費を差し引いた金額を利益として計上することができます。つまり、経費が多額であるほど帳簿上の利益は減ることになり、納める税金も少なく抑えることができます。
では、期間を短縮することのメリットはどうでしょう。例えば会社が収益物件を保有して、総額1億円の減価償却が可能だとします。そのとき、「2,500万円×4年」で償却する場合と、「250万円×40年」で償却する場合を比較してみましょう。
このうち節税効果が高いのは明らかに「2,500万円×4年」のほうです。なぜなら、短期間で多額の経費を計上するほうが納める税金が少なくなるからです。そして、節税によって浮いたお金を別の投資や本業の拡張などに回すことができます。
しかし減価償却費として赤字計上する1億円は4年で償却しても、40年で償却しても同じではないか……と考える方もいるかもしれません。 間違いとは言えませんが、日本の税金は累進課税で、利益が多いほど税率が上がるため、実際には税金額が異なってきます。
4年間で2,500万円ずつ、大きく、短く減価償却して一気に税引き前利益を圧縮したほうが、結果として税金の総額を抑えることにつながります。年間250万円の赤字ではさほど税引き前利益を抑えることはできず、節税効果も高くありません。
減価償却期間を短縮する方法
節税効果という観点で見ると、減価償却期間は短いほど良いことになります。
不動産の場合、最も法定耐用年数が短いのは木造の物件(22年)であり、鉄骨造(34年)、最も長いのはRC造(鉄筋コンクリート造)の物件(47年)です。 このことから、最短で償却できるのは、法定耐用年数を過ぎた築22年超の木造物件ということになります。この場合、減価償却期間は4年です。最も効率良く節税できるのは中古の木造アパートと言われるゆえんです。
建物の耐用年数が長くても、減価償却期間の一部を短縮するテクニックもあります。それが建物本体と設備(給湯器やエレベーターなど)を分けて償却する方法です。こちらはRC造など償却期間が長い物件に有効です。
建物本体と分けると、設備部分の償却期間は最短3年まで短くすることができます。設備の割合は、建物全体の1~2割というのが一般的です。
具体例として、建物価格1億円、うち設備価格2,000万円、築23年のRC造物件でシミュレーションしてみましょう。築23年なので残りの減価償却期間は計算により28年となります。
本体と設備を分けない場合の年間の減価償却費は357万円です。
これに対し、本体と設備を分けると、当初3年間は年951万円の償却費を計上できます。3年間で合計すると2,855万円の償却が可能です。
なお、以前は設備に関して定率法で計上する方法も認められていましたが、現在は法改正によって定額法のみが認められています。
減価償却期間を短縮する際の注意点
建物本体と設備を分けることで、大きく短く減価償却できることはここまで書いてきたとおりです。
ただ、上記のケースでは、4年目以降の償却は建物本体の285万円が最後まで続くことになります。本体と設備を分けない場合より、4年目以降の税額は高くなるということに注意しましょう。
建物の減価償却期間を短縮する方法は、特にインカムゲインを得ながら節税し、物件の価値が最大化したときに売却して利益を得る運用モデルに向いています。不動産投資をする際は、償却期間を短くする方法で活用できないかを考えてみてください。
減価償却費での赤字による融資への影響について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。